欲望のコントロール 承認欲と創作欲の違い

今回は写真ビギナーの方にはピンとこない話かもしれませんが、いい写真を撮りたいと願う人の【欲望】のお話について書いてみたいと思います。

いい写真を撮りたい…カメラを手にする全ての人の共通の願いですが【いい写真】を定義するものは何一つなく、強いてあげるのなら「自分がいい写真だと思った写真」がいい写真ではないでしょうか。

いつかは傑作と呼べるいい写真を撮りたい!またはおっこれはぜひ撮りたい!と思う風景や被写体に出会った時、これを私は【写欲】とよんでいます。

写真を撮りたいと願う写欲。これは写真活動の原動力であり、これが情熱的であるほど労力を惜しまず妥協をせず撮影に挑むことができるものです。写欲は写真家のエネルギー源なのですね。

しかしエネルギー源になるものも良質なものとそうではないものがあります。簡単に二種類の欲望に分けて考えてみましょう。




1.承認欲

一つ目は承認欲です。驚きの写真、上手な写真、そういった立派な写真を撮り発表することで他人から凄い人!と尊敬の目で見られたい、立派であると認めてもらいたいという欲求です。冒頭でいい写真とは撮った自分が良いと思った写真である…と書きましたが承認欲に支配されてしまうと他人から見ていい写真が「いい写真」と思ってしまうためウケの良い写真を求めてしまい個性を失ってしまうものです。

現代で言う「インスタ映え」は承認欲に支配された境地です。写真コンテストで受賞したいと願い撮った写真も同じようなものです。

承認欲は聞いた話によると人間誰しもが持っている根深い欲望の一つだそうです。気になる異性にアプローチする時、その人の仕事ぶりや日頃努力していることを褒めてあげると承認欲が満たされて自分に対して好意的になってくれるそうです。

人は誰しも他人や社会に認めてもらいたいと願っているのです。だから写真を撮る時も、ついその願望が出てしまうのですね。

EOS6D mark2




2.創作欲

二つ目は創作欲。作品を自らの手で生み出す喜びです。幼いころ粘土を与えられて何でも好きなものを作って良いですよ、と言われ楽しみながら色々な作品を作った思い出が誰にでもあると思います。創作とは本来、何を作っても良いですよ…という自由が与えられている部分に最大の楽しみがあるものです。その楽しさを知っている人であれば「また作品を生み出したい」という欲望が出てくるものです。

実は創作欲は写真ビギナーにはあまり出るものではありません。というのも一枚でも良いから自分なりの傑作と呼べる作品を撮らないと、生み出した時の喜びを知ることがないからです。だからまぐれでも良いので自分なりに「これは傑作だ」と思える一枚を早い段階で手に入れたいものなのです。

写真家(プロ、アマ、有名、無名問わず)は一人の作家として生み出す喜びを知り、創作欲に従順に写真活動するべきと私は考えています。

ここでご紹介した写欲の種類、【承認欲】と【創作欲】は誰が聞いても良いのは後者の創作欲だと感じられたと思います。しかし承認欲はとにかくパワフルな欲望なので、この力を利用するのはある意味で有効です。というのも写真ビギナーの方は最初のうちは良い写真が撮れず「遣り甲斐」を見失いがちです。もう写真なんてやめよう…なんて事になるくらいなら強力な承認欲をエネルギー源としても悪くはないと思います。

しかし何年もやっている良いベテランがいつまでも映え写真を狙って派手な写真を撮っているのは関心できません。それに万人ウケを狙うカメラユーザーは世にゴマンと存在するので、その人たちと似たような写真を競うように撮っていては、いつか虚しさを感じる日がくるものです。

以前から同じことを何度も書いていますが「私の場合はこうです」という個人的な発表として個性を大事にしてみましょう。それを発表して反応が薄かったり賛否あるかもしれません。しかしそもそもARTとはそういった世界です。反応が薄いと寂しいですが少しの勇気で「万人ウケ」を卒業するのは簡単です。

ぜひ「創作欲」を意識して一人の個性的な作家になってみましょう。




風景から表現したい一つを抽出して撮る写真

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、この春のシーズンは良い写真が撮れましたでしょうか?お気に入りの桜並木でバイクを置いてパチリと撮ったけど、よく見たら去年も全く同じような写真をこの場所で撮っていた…なんて方はおられませんか?写真をやる上での一つの重要な楽しみは進化を実感することです。日々、上達を意識して写真を楽しみましょうね。

つい先日のニュースで老舗雑誌である日本カメラが休刊とありましたね。昨年は日本最古のカメラ雑誌であるアサヒカメラが休刊。雑誌業界で言う休刊とは廃刊とほぼ同じだそうで残念なニュースですね。カメラ雑誌にかぎらず出版業界の全体が振るわないようですが、これも時代の流れなのでしょうか。

いま多くの人が写真を楽しみ写真という文化が過渡期を迎えています。スマホで撮る人、SNSで世界に発表する人…一見すると写真文化は盛況のように思えます。しかし古くからあるカメラメーカーやカメラ雑誌が衰退していく…いったいなぜでしょうね。昔からあった一般需要における写真文化は記念写真、記録写真、趣味の写真など現在と大きくは変わっていません。変わったのはカメラのデジタル化、インターネットの普及による写真文化の変化、スマートフォンの登場といったことでしょうか。

多くの人々が「私もいい写真を撮ってみたい」という願望を抱いている。このことについて改めてもう一度、メーカーや雑誌などは考えた方が良いのかもしれませんね。




さて今回は前回の投稿でご紹介した小湊鉄道のあるツーリング写真の作品を使って解説してみたいと思います。最近、すっかり鉄道とバイクのハイブリッドばかりです…

はい、いつも通りまずはスマホで撮った撮影地の様子です。県道から平行して走る小湊鉄道の線路。そこに菜の花が咲いているポイントがあったのでR1200GSを停めて撮影に挑みました。この近くにある菜の花の鉄道風景で有名な「石神菜の花畑」とはまた違った雰囲気で、自然と咲いている菜の花という控え目な雰囲気が私の琴線に触れました。

まずはどんな風に魅せたいかな?と希望のイメージを作ります。次にそれがここで出来ることなのか?撮影地の条件と照らし合わせて考えます。続いてキャスティング、この撮影シーンのキャストは後でやってくるであろう1.列車 そして2.線路 3.菜の花 といった感じです。メインキャストは列車で菜の花は舞台、線路は写真の構造となります。

この場所で私が特に気に入ったのは線路が微妙にS字を描いていることです。写真デザインの観点で色、線、図形…といった要素を風景から見つけ出し、写真の中に組み込んでいくことで観賞者の目を楽しませる写真が実現できます。特にS字曲線は視線誘導線として心地よく目を走らせる効果があるので歓迎すべき要素です。

上の写真から分かると思いますが多くの場合で実際の様子とはさして美しくはないものです。もしそのままの景色が絶景!ということであれば写真家のできる仕事は少なく面白さもありません。イエローストーン国立公園、夕陽の当たるマッターホルン、水鏡のモンサンミッシェルなどを前にすれば、普通にシャッターを押すだけで誰でも立派な写真が撮れるものです。

そういった意味では多くの人が気にもとめずに通り過ぎていく風景こそ、写真家のオリジナルな表現ができる、とも言えますね。




左はS字の導線 右は①と②の比率が1:3の比率

画面という長方形の四角形の中でS字曲線が理想的に入るようアングルを模索しました。同時にバイク+ライダーのエリアとそれ以外の風景のエリアで2つのエリアに理想的な比率を作ります。比率は理由なき等分(1:1)を避け、原則として1:3単位の奇数で作っていきます。有名な三分割構図や露出の段数が1/3単位であること、そもそも画面という長方形が2:3の比率であったり写真の世界ではとにかく【3】あるいは【5】といった奇数が傑作へのPINコードになっているのです。

三分割構図 左は交点に列車を置いた 右は色のエリアを斜めに3分割とした

構図とは必ずしも1つの手法を1つだけ使うものとは限りません。複数の手法を組み合わせてもOKです。三分割構図は写真の世界ではよく知られた構図ですが例えば交点、線、面といった具合に複数のポイントで使うことも出来ます。この場合は列車の位置を右上の交点に合わせ、イエローのエリアを中央としグリーンで挟んだ三分割としました。線で三分割とするとき必ずしも線を水平に使う必要はありません。このように斜めに使っても悪くはないのです。

こういったアングルを作るにあたり、何をすれば出来るの?と聞かれればカメラの位置を数センチずらしたり、三脚のエレベーターで高さを微調整したりと実際には地味な作業です。大切なことは予め知っている知識を目の前の状況と結び付けて【いま出来ること】を思考することです。それは謎解きのように考え込むことではなく、ひらめきや直感を使って瞬間的に決めます。説明すると理屈っぽいですが実際には感覚の世界ですね。




EOS6D Mark2 + EF135mmF2L

この場所で私が大切にしたかったことは菜の花が人工的ではなく自然とそこにある雰囲気です。そこへ登場した気動車キハ200とその景色に出会ったツーリングライダー。一期一会の風景の出会いといつまでも変わらない素朴なもの。こういった「気持ち」をよく意識してイメージを作りました。投稿のタイトルに「表現したい一つを抽出」と書きましたが、何でもないような風景の中から自分の気持ちを抽出するように撮りましょう、という意味ですね。

最初はとにかく試行錯誤です。時間的猶予があればとにかく良く見て、良く感じ、良く考えて試す。画像を再生して「これが一枚の写真となったとき、これで果たして良いか?」と自問してみます。少しの傾き、少しのバランス、少しの比率などほんの小さな調整で完成度が激変することを意識しましょう。神は細部に宿るのです。

ところでこの撮影場所、スマホで時刻表をチェックしようと思ったらまさかの圏外でした。近くに駅や踏切が無いので音で列車の登場を判断するにはキハ200のディーゼルエンジン音だけが頼りでした。県道は割と交通量がありトラックなどが通るとキハ200の音がよく聞こえません。なかなか難儀しました…

しかしいざキハ200が登場すると運転手さんが私を確認したのか「プワァ~ン」という独特の警笛を鳴らして挨拶してくれました。この時の嬉しかった気持ちも大切に帰宅してからLightroomでレタッチをしてみましたよ。

今回はこの辺で!!!

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三等分の神秘と構図の暗号化

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、バイクツーリングと写真を楽しまれていますか?バイクの楽しみ方ってツーリング、カスタム、スポーツ走行、クラブやイベントなどの参加、それから単純にバイクと共に生活する楽しみ…といった具合に色々ありますよね。皆さまはどれでしょう?

私はこういった「バイクの楽しみ方」の中にぜひバイク写真というものを定着させたいと思っております。

つい先日、知人から「写真も人によって向き不向きがあるでしょ?」といった質問を受けました。確かに趣味やライフワークとして写真をやるにあたって向き不向きはあるかもしれません。それは性格…というか「人となり」が写真に出るからだと思います。

私が思うに写真をARTとしてやっていきたい、という場合にこんな性格の人が良いかな?と思うのは感受性が豊か、純粋な人、発想力がある、研究熱心、自分が好き、デザインやファッションに拘りがある、恥ずかしがらずに自分を出すことが出来る…といった感じでしょうか。

逆に写真をやるには向かないな…という性格の人は見栄っ張り、規律正しくマニュアル通り、人はどうしているか気になる、何事においても無関心、考えるのが苦手でネットで調べてばかり、自分の内面を出すのは恥ずかしい…といった感じでしょうか?ただ、これに当てはまるような人でも「写真の時だけは違う!」と意識すればOKだと思います。





さて今回は写真の構図において3等分の神秘と題して写真構図における視覚的な印象や安定について書いてみたいと思います。

EOS6D mark2 + EF35mmF2 IS

先日、南房総の港でこんな写真を撮ってみました。普段ならヨット達は海に浮かびながら、その船体を休ませている風景なのですが、この時は恐らく塗装などの整備のために二隻が陸に上げられていました。

いかにもお金持ちが乗るようなクルーザーと違って小さなヨットはどこか気品があって惹かれるものがあります。

3等分というと多くの人がまず3分割構図を思い浮かべると思います。三分割構図は写真を始めるのに最初に習う構図の基本ですよね。多くのカメラにも三分割のグリッド線を表示できる機能を有しています。私も三分割構図は実によくできた構図理論であると感じます。

しかし3分割構図は有名すぎるあまり使い方によっては「あからさま」すぎて見る側に写真の構造がバレバレになってしまう側面があります。そんな時は上の作品のように画面内の随所に3等分を散りばめて複雑な構造をもった写真に挑戦してみましょう。





実際の撮影現場の様子はこんな感じです。まずメイン被写体にしたかったヨットとR1200GSをどう組み合わせるかが難題でした。単純に両者を並べただけでは「それがどうした写真」になってしまいます。ここではライダーの登場によって視線の向け方などを工夫して「バイク旅の途中でヨットのある風景に出会った」というStory性を作ることにしました。

特定の被写体とバイク(+ライダー)を撮る場合、その構図は一般に撮り尽くされた手法に陥りやすいので、手の込んだ構図を組み立てることでツーリング写真としてユニークな一枚が実現します。

この場合は手前にあったもう一隻のヨットに注目し、これを前景にした奥行きのある構図を作ることにしました。目の前の様子から写真に使えそうな要素、特徴、撮影条件をよく分析します。ここでは手前のヨットの船体は赤であること、船体を固定しているロープが構図に使えそうなこと、赤いヨットより手前には撮影スペースがない事、などを認識しました。

これらを考慮して船体の赤を印象的にするよう大胆に寄り、ロープの構成は三分割構図と三角構図のハイブリッドとすることで構造の暗号化を計っています。このアングルに辿り着くまで汗が垂れるほどの労力を費やしましたがビシっとはまれば納得のアングルになるものです。

構図の暗号化は見る側に容易に写真の構造を感じさせず、作品の主題に集中して見てもらえる利点があります。それにしても「3」とは本当に不思議なもので三分割構図、三角構図、3つの被写体など写真に限らずあらゆる美術に使われる奇数の神秘。なぜそうなのかは分かりませんが2等分は美しくなく、3等分が美しいのは疑う余地はありませんね。




ところで当ブログに限らずネット上では様々な写真解説がありますよね。もし私がこのブログで解説していることと違うことを書いている記事をみたらどうしますか?例えば今回の3等分のお話。私は1:1の等分ではなく3等分を基本に考えましょう、と書いてきましたが、ある別の解説で1:1がキホンだ!!と書いてあったら… そういった時は簡単です。その解説を書いている人の作品を見て見ましょう。作品を見て自分がいいと思った方を信じればOKです。

おっと…長くなってしまったので、今回はこの辺で!!

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天の川を撮るなら実は千葉だ!天の川とバイク写真の撮り方

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、今回は星景写真・・・それも天の川の撮影ノウハウを解説してみたいと思います。すごくハードルの高いイメージですが恐らく皆さまが今お使いになってるカメラで天の川はキレイに撮影できるはずです。

ネットで検索すると天の川の撮り方はけっこう情報が出てきますが、今回はバイク写真&ツーリング写真としての天の川の写真の撮り方として私なりのノウハウを公開してみたいと思います。

天の川の撮影って天体の専門的な知識がないと難しいんじゃ…、カメラのベテランでないと写真にならないでしょ…?いいえ大丈夫ですよ。

EOS6D MARK2 + EF35mmF2 IS 千葉県南房総市




・天の川の撮影で準備するもの

まず天の川の撮影において必要な物からご紹介します。1.マニュアル露出できるカメラ(できれば高感度でも低ノイズなモデル)2.三脚(3型くらいのしっかりした物)3.一眼レフの場合は広角レンズ 4.LEDライト(キャンプ用のヘッドランプ 周囲の確認用に強力なライト バイクを照らす用に小さな物を1~2個) 5.レンズの結露を拭き取るレンズクリーナー 6.Sky ViewやStarwalkなどの星座観測用のアプリをスマホに入れておく 7.できればadobe Lightroomもしくはphotoshopのソフトorアプリ。などです。

天の川とバイクを撮るなら35mmがおススメ!

レンズは星景写真では14㎜などの超広角レンズから24mmくらいを使用するのが一般的ですが私が個人的にお勧めしたいのは35mmです。星空に流れる天の川を表現するなら14mmですが天の川銀河自体に絶対的な存在感を持たせるなら35mmです。(APS-Cカメラの場合は24mmくらいに相当します)

解放値はF2.8くらいは欲しいですがカメラが低ノイズであればF5.6くらいでも何とか許容できると思います。私も以前はキャノン純正EF14mmF2.8Lを使っていましたが今はSIGMA12-24mmF4.5-5.6DGにしましたが感度を上げても問題ありません。

それから天の川を撮るためにバイクで出かけるのですから夜間走行用の装備(クリアシールドなど)もお忘れなく。

・天の川の撮影ポイント

天の川の撮影で最も大事なポイントは撮影地選びです。天の川が目視でしっかり確認できるポイントでないと高感度が優秀なカメラでも解放の明るいレンズでも難しいです。

天の川がキレイに見える場所?と聞くと長野県や北海道などの山間部をイメージしますが、意外や意外なことに千葉県の房総半島もキレイに天の川が観測できます。と言うのも今の時期、天の川銀河が見えるのは南東の空です。房総半島の太平洋側、外房のエリアであれば南東の方向は海しかありません。

こんな感じで南東に遮るものがなく海!というロケーションであれば天の川の観測に向いています。伊豆半島は大島があるので微妙ですが下田よりも南なら良さそうですね。

外房の場合は険しい断崖や九十九里平野のような海岸が多いのですが、照明の無い広い駐車場や公園のような場所、高台の空き地などを探してみましょう。

これは南房総市千倉町の漁港で撮った1枚ですが街明かりや近くの街灯、灯台などの光があるとこのように影響を受けてしまいます。夜空の中心に天の川があるのですが殆ど確認できません。この写真は光害の影響を受けたけど、これはこれで不思議な写真になったと思い仕上げてみましたが…。イメージと違う物が偶発的に撮れてもそれは魚釣りで言う外道のようなものですね(ごく稀に傑作になりえますが)。

自分の目では真っ暗闇でも広角レンズをセットすると近くの街明かりなどが影響してしまうものです。カメラのすぐ背後にある道路の街灯なども影響しますが、これは場合によっては地上にあるバイク+ライダーなどを程よく照らす照明として機能する事もあります。




・天の川の撮影時期、時間帯

EOS6D mark2 + EF35mmF2 IS  F2 15SEC ISO1250

今回ご紹介する作品は春から初夏にかけての天の川です。8月、9月となると垂直になって再び斜めになっていくので主に縦構図での写真になると思います。ちなみに天の川は冬よりも夏の方が明るく美しく見えるそうです。

天の川の撮影で注意したいもう1つのポイントは月です。月明かりは肉眼で感じるよりも実際はとても強烈で星空の観測や撮影に大きく影響するものと考えましょう。簡単に覚えるのであれば満月やそれに近い月齢は避けて、新月や三日月くらいのタイミングが狙い目ということになります。

半月程度の月例の場合は月の入り時間をチェックしてみましょう。季節によって変動しますが夜明け前の時間に月没することも結構あります。




F2 15SEC ISO1250

この写真は先ほどのカットと近い場所で撮りましたが先ほどは新月、こちらは月齢9の半月(月齢14が満月)です。半月をカメラの背後に撮っています。露出設定は先ほどと全く同じでF2 15秒 ISO1250 です。ぜんぜん明るいのがお分かり頂けると思います。ちなみに方角的には目の前に天の川ですが、当然ですがこの設定ではほとんど天の川は写りません。

しかしこのような状況でも月没の時間が近いのであれば月没後の30分から1時間くらいでかなり夜空は暗くなるのでチャンスがあります。タイムリミットは日の出で空が明るんでくる直前です。解放の明るい広角レンズを持っていないしカメラも高感度に弱い…という方は肉眼では分からない程度に空が明るんでいる3時や4時に撮るといいと思います(徹夜の撮影になっちゃいますが…もうそうなったら朝焼けの景色も撮って帰るしかありませんね)。

それと天の川は南へ向かって移動するので長時間にわたり待機する場合はバイクとの構図がずれてくるのでご注意を。

長くなったので次回に続きます

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目に見えないものを写真にする技術☆被写体と空間

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、不可解なタイトルをつけてしまいましたが今回はいつもと少しアプローチを変えて写真解説を書いてみたいと思います。題して「目に見えないものを写真にする技術☆被写体と空間について」でございます。

ビギナーだったころ一歩前に出て被写体に寄って撮ること、と教わりましたよね。きっと多くの方が知っている写真の基礎的な技術ですが皆さまはいつも意識されていますか?被写体に寄ることは特徴を強調したり主題をより明確にすることが目的ですが必ず寄らなくてはいけないのでしょうか?被写体に寄るは重要なのは理解できますが逆に引くことはダメなのでしょうか?

「被写体に寄る」に限らず例えば三分割構図とか写真の基礎と言われること、これらは「使うテクニック」と「使わないテクニック」の両者を身に付けるよう心がけてみましょう。この場合は三分割構図ではない、ここでイメージ通りに表現するのは敢えて被写体に寄らない、といった具合に【使わない方】も覚えるのです。




RICOH GR APS-C

さて今回は「目に見えないものを写真に・・・」と題しましたので、理論的なお話ではなく少々オカルト…ロマンチックな観点でご説明します。上の作品は東京の日常にあったバイク風景を写真にしたスナップです。少し前に風景主体のバイク写真はライダーの姿が無いと風景の中でバイクがお留守番しているみたいで不自然である…と書きました。しかしこの写真はツーリング写真ではなく本当にバイクが主人の帰りを待つお留守番状態なのでライダー無しでも成立するバイク写真だと思います。

私がここで写真を撮ろうと思ったのは都会特有のビル間から差す美しい光、ガラス張りの建物から透過している光の様子、苔むしたアスファルトなどが気に入ったからです。バイクという特定の被写体が存在しているので本来であれば寄って撮るのがセオリーです。しかしこの場合はその空間において被写体が放っている存在感を写真にしています。

「そこに在る」という事実を表現するために目には見えないオーラのような存在感をとらえるのです。




「そこに在る」をとらえるために被写体に寄らない。あえて空間を多めにとるという表現手法です。この引いて撮るやり方は被写体の小ささや可憐さを表現するのにも使われますが、ここでは存在感を放っている範囲をフレーミングし空間自体を撮るのでそれとは少し意味合いが異なるものです。

そう、存在感を放っている範囲です。目には見えないですよね。それは上の写真のように一輪の花がまるでその場に明かりを灯してるような空間のことです。明かりが灯されている部分とその周囲までが対象範囲です。「そこに在る」を撮るとはこうゆう事です。

EOS6D Mark2 + SIGMA50mmF1.4ART

被写体が放つ存在感が目の前の風景の中でどこまで及んでいるか?これは「ものを撮ろう」と凝り固まっていては捉えることができません。被写体がその空間に放っている存在感はまずは作者が被写体に心動されたことに向き合い、その場所に対してどう存在してるのかを感じ取ってみましょう。

この作品では廃屋が放つ崇高さだけでなく、かつて不毛の地を開拓したが自然の力には及ばなかったというStory性なども含め、場所に対して存在している事実を考えてみましょう。




このように目の前にある事実に対して心が動かされること、感じ取ること、想いを馳せることは「いい写真を撮ってやろう」という「やろう精神」では実現できません。以前も書きましたが「私の場合はこうです」という個人的な美的表現と「どうだうまいだろう」というやろう精神は似て非なるもので、間違っても後者にならないよう注意が必要です。被写体と素直に向き合って出会いに感謝する心を持ってみましょうね。

えっ?そんな善人じみたことは難しい?では上の作例でご紹介したような被写体を見つけたらまず最初に「こんにちは」、撮り終わったら「ありがとう、また会いましょう」と呟いてその場所を立ち去りましょう。これでOKですよ。

今回はこの辺で!

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常識を飛躍した表現に…<上級>ツーリング写真

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、コロナウイルスショックで大変な状況ですが如何お過ごしでしょうか?こういった状況になると平凡な日常が実は有難いことだったのだ…と改めて実感するものですね。

普通に会社に行ける事、普通にお店や映画館に行ける事、イベントや芸術鑑賞を出来る事…そんな「普通」を早く取り戻して、そして健康に生きることに感謝できる日がくるといいですね。そのために私たち一人ひとりが出来ることを確実にしていきましょう。




さて今回は私の独り言風にツーリング写真に関わる少々マニアックなお話を書いてみようかと思います。確か今年のはじめくらいにドキュメンタリータッチなツーリング写真とRoadTrip Photoのバイク版を今年の課題にすると書きました。ツーリングのRealを伝える写真は今まで意識したことも無かったので楽しい試みでしたが、いざやってみると課題にするような感じではなく、何というかこう…簡単だったのですね。感じたものへ視線向けた、それにレンズを向けてシャッターを切るだけですから。

そこでちょっとハードルを上げて常識の枠を飛躍したアートと呼べるツーリング写真にも挑戦してみることにしました。

EOS6 mark2

以前から芸術、アートを意識していなかった訳ではないのですが、なにしろ勉強不足で芸術とはなんぞや?というアカデミックなことになると全くダメでした。今も芸術について勉強している訳ではないのですが、以前よりも芸術を好きになり身近に感じるようになったのは確かです。




そこで先日、桜の咲く千葉県富津市の佐久間ダムでこんな写真を撮ってみました。日陰の多い鬱蒼した小径でしたが山間の隙間から強い太陽光が差し込み、ちょうど桜の花の部分とバイクを停めて良さそうな場所に強い日差しが差し込んでいました。

日の当たっている場所にR1200GSを停めて撮影を開始したのですが、当初のイメージが曖昧だったため、撮影は難儀しました。どちらかを立てれば一方が犠牲になり最終的に納得のいく着地点が見つからないパターンです。特に前景になっている緑や茶色が桜の存在を曇らせていました。

この時、どうも自分はいつもこんな事に苦しんいる…なにか腑に落ちない。仮にこの作業で納得のいくアングルを発見しても果たして自分が憧れている写真になりえるのだろうか?そんな疑問がふつふつ沸いてきました。

「そうだ、こんな普通の撮り方なんてもう〇〇食らえだ!」と半ばヤケになり、開き直りとは恐ろしいもので突拍子もないアイデアを思いつきました。それが上の写真です。何をしたかと言うと緑と茶色を抜いたのです。モノクロ写真に桜のピンクとR1200GSのブルーがあるのみ。後でLightroomでそうしようと思いシャッターを切りました。

もちろんこの写真が成功であったか?は微妙です。ただ非常識なことをしたのは事実です。私たち現代人、特に職業として芸術とは直接関係ないサラリーマンや公務員はどうも集団と同調するよう教育されているようです。その上で常識の範疇内で物事をすすめるのを良しとする傾向があります。

みんなと同じように常識的にやる…

無意識下に常識を飛躍するような発想を持ち合わせていない人間になっているのかもしれません。日常生活やお仕事をする上ではこれでも良いのかもしれませんが、自由を与えられたアマチュアの写真家が常識に縛られていて良いことがあるでしょうか?




既に誰かがやった撮り方、いい写真とはこんなんだ、一般に画一化された上手い写真…そんなものは貴方の個性でブチ壊してやりましょう。失敗に終わっても損害は何もありませんし、ましてや誰にも怒られたりしません。

私はこの4月からこういった常識を飛躍したアートツーリング写真に挑戦してみたいと思います。楽しそうでしょう?

今回はこの辺で!

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ピント位置と露出で魅せる複合上級テクニック

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、せっかくの良い季節ですが容易に外出できない有事となってしまいましたね…。ここ数日、究極のツーリング写真ではPV数がすごく伸びておりまして、きっと多くの方が外出できずにご自宅でインターネットをされているのだと推測されます。

こういう時は街中でスナップ写真や人の多い場所で桜の撮影とか難しいので、知識をつけるために究極のツーリング写真の過去記事をご覧ください・・・ちょっと無理があるかな?




さて今回はピント位置と露出で魅せる複合テクニックと題して上級ツーリング写真の解説をいってみたいと思います。

EOS6D mark2 + SIGMA150-600mmF5-6.3DG C

まずは完成作品からご覧ください。南房総の海岸線で撮った一枚ですがこの時、良いお天気と反して海は荒れていました。岩場に砕ける波の様子にすぐに私のセンサーが反応しました。

この砕ける波のダイナミックな表情を望遠レンズで引っ張って撮ろう。すぐにそう思いついてEOS6D mark2にSIGMA150-600㎜F5-6.3DGを装着して撮影に挑みました。

まずリアルサイド分析ですが撮影現場は太陽光が眩しいくらいに注いで十分に明るいこと、岩に砕ける波の様子が様々な表情があること、波の飛沫はかなり白いこと、遠景に船が行き交っていること、後方からの順光によりR1200GSアドベンチャーの各部にハイライトが入り輝くこと…などが確認できます。

充分に明るいということは早いシャッター速度をかせげる状況です。そして望遠レンズを使うには十分なスペースも確保されています。ここは岩に砕ける波を主題に撮るのですから大胆に絞りを解放に設定しピント位置を波にしてみました。

いちおう書いておきますがこのようなシーンでは迷わず高速連写モードを使用します。この撮影シーンだけで軽く200カットはシャッターを切りました。たくさんのバリエーションの中から自分の気に入った波の様子の1枚を後でselectする作戦です。




最終的に仕上げまで行ったカットは25枚でした。その中で上の写真のように葛飾北斎の神奈川沖浪裏を彷彿するような波のものもありました。これを採用カットにするかかなり悩みましたが、採用カットに選んだ写真の方が飛沫が鶴の化身のようで印象的だな、と思い最終的にselectを終えました。

上級者であれば魅せ方は1つと限らず2つ3つと複数の手法を複合的に駆使して表現してみましょう。今回の作品では先ほどご紹介した絞り開放により深度で魅せる方法、たくさんの連写から1枚を選ぶこと、そしてもう1つくらい何かないでしょうか??そう露出です。

リアルサイド分析で波の飛沫は真っ白である…と確認しましたが、この白さが白トビしてディティールが失われないようこの部分に露出を優先します。結果、他の部分が少し暗くなってしまいますが、そうなっても変な写真にならないように構図を組み立てます。飛沫に露出を合わせたことで高速シャッターが捉えた飛沫の一粒一粒まで精密に表現することができました。




いかがでしたか?私もまだまだ勉強中ですが一枚の作品の中にいくつもの表現手法を組み合わせた写真。そうすることで写真の構造を暗号化して見る側に巧妙さを容易には感じさせないという効果もあります。

ちょっとマニアック過ぎたかな…

今回はこの辺で!!

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写真は完璧であってはならない理由<上級>ツーリング写真

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、芸術はお好きでしょうか?当ブログでは以前よりツーリング写真、バイク写真を芸術作品…つまりARTへ進化させバイク写真文化を成熟させていきましょう!と発信してきました。

しかしどうすればバイク写真という小さな写真文化をARTへ昇華させることができるでしょうか?そもそもARTって何でしょう。私も勉強不足なのでこの辺の深い話ができないのですが、観賞者サイドも作者サイドへ寄り添って共に思考して楽しむものがARTではないでしょうか?

美術館に行くと難解な作品を目にすることがあります。特に印象派の作品や現代アートなんかでよく感じます。「これは一体なんだろう???」「作者は何をうったえているのかな?」と作品の意図がパッと見た瞬間ではすぐには分からない作品です。このように観賞者が思考することが【観る側の楽しみ】です。ただ見るのではなく感じて思考すること。この意識がないと芸術を単純に視覚的な美しさやバランスだけで見てしまい面白くないものになります。

そして観賞者を楽しませてくれる芸術作品ほど曖昧さや不完全さがあるものだな…と私は感じます。あの岡本太郎さんも「芸術は美しくあってはならない」「芸術は心地よくあってはならない」と何かに書かれていました。不完全さや曖昧さからくる思考の渦を感じ取るもの…よく分かりませんがそんな感じがARTなのではないでしょうか。




さて今回はそんな観賞者を思考や想像で楽しませるツーリング写真をご紹介してみたいと思います。

これは撮影現場の様子をiphoneで撮った1枚です。漁船のキャビンだけが空き地に捨てられている様子ですが、私はこういった光景がいちいち心に刺さってしまうので、撮らずにはいられませんでした。

しかしこの朽ち果てた漁船のキャビンとバイクを合わせてどのようなツーリング写真を撮りましょうか?被写体の特徴をよく観察し、自身が動いた心の様子を自ら感じ取りながら思考します。

まず特徴的だと感じたのは連なる3つの窓です。ガラスは割れていますが枠を固定しているネジなどが面白いと感じました。ここを使って窓の向こう側へR1200GS-ADVENTUREを置いてこんな風に撮ってみました。この写真の説明範囲は漁船のキャビンのような物が横たわっているのだな…という事がかろうじて伝わる程度です。

「説明範囲」とは写真であるからには元は事実な訳ですが、それが何であるか見る側へ説明する作者の責任ようなものです。バイクを撮ったのに小さすぎたりボケすぎたりして、見た人に「ここに写っているのは自転車ですか?」となればバイク写真としての説明範囲が十分でなかったという事です。




ここではバイクはもちろんの事、メイン被写体である漁船もかろうじて漁船であることが多くの人に伝わるのではないかな、というつもりでこのように撮ってみました。

しかしこれだと見る側の思考の楽しみが少々もの足りないようにも感じます。説明範囲が広すぎて退屈なのです。せっかく変わったものを見つけたのですから、もっと観賞者の想像力をかき立てる工夫はできないでしょうか?

EOS6D mark2 + EF35mmF2 IS

そこで最終的にこんな風に撮ってみました。キャビンにぐっと寄って窓枠を主題にした写真にしたのです。寄ったことで枠の様子が明らかになりメイン被写体の質感が表現でき、わずかに残されたガラス片も写すことが出来ました。

しかし、これだとこの白いモノが何なのか?撮影現場を見ていない観賞者には得体の知れない物になってしまいます。説明範囲が狭く事実が伝わらない写真ですね。これが何であるかは観賞者が思考する取り分として意図的に残します。

「わけが分からない」と見向きもされないかもしれません。ここは「想像力が乏しい観賞者は残念ながらターゲット外にしよう」と大胆に割り切りましょう。たまには良いではありませんか。




このように写真とはいえ実際の様子の全てを明らかにせず、あえて観賞者の持ち分として想像範囲を残す手法のご紹介でした。写真は事実を元に生み出す芸術ですが実際の様子の何もかもを写す必要はなく【説明範囲】と【想像範囲】の割合を作者である貴方が裁量するのが面白いのではないでしょうか?というお話でした。

…完璧に説明した写真なんて退屈ではありませんか。

今回はこの辺で!!

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これが究極の黄金比☆フィボナッチ螺旋構図とバイク写真

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、河津桜の写真はもう撮られましたか?私は房総人なので南房総の河津桜「頼朝桜」の写真を今年も撮ってみました。

頼朝桜とはかつて石橋山の戦いに敗れた源頼朝が小舟に乗って房州の竜島(鋸南町)に流れ着き、そこで再起をはかったことに由来するものです。桜自体は河津桜と同じだと思いますが呼び名が房総では「頼朝桜」となり佐久間ダム親水公園や保田川で頼朝桜のお祭りも開催されるのです。

実は去年も保田川で写真を撮ったので今年は同じような写真を撮らないように、進化を確認するぞ!といった感じでハードルを自分で上げて撮影に挑んでみました。




EOS6D Mark2 + EF70-200mmF2.8L IS

桜に限らず「今日はお花のシーンで撮るかも」という時に迷わずに持っていくレンズはEF70-200mmF2.8L ISです。このレンズは開放F2.8が通しで得られるキャノンの大三元レンズですが、浅い被写界深度をコントロールしボケ具合で花のある風景をイメージ通りに表現できるのです。

で、今回の写真は究極の黄金比と言われるフィボナッチ螺旋構図、またはフィボナッチスパイラルと呼ばれる黄金螺旋構図を採用してみました。




フィボナッチ螺旋構図とはこのような構図です。黄金比(1:1.618)に基づいた比率の曲線です。少々アカデミックな話ですがフィボナッチ数列といい1から始まり前の数字を足していく数列(1.1.2.3.5.8.13.21・・・)があります。この数列を正方形として積み合わせていくと上の青点線のようになり、その交点を曲線でつなぐと何とも神秘的な渦巻き型の曲線ができあがります。

神秘的な…と形容したのは根拠があって、このフィボナッチスパイラルはオウム貝の断面、竜巻、花びら、DNAなど自然界や生物に存在している正に神秘の曲線なのです。

Lightroom

何だか難しく聞こえますが1:1.618だの数列だのを完全に理解する必要はありません。ポイントはフィボナッチスパイラルを何度も見て覚え、実際の撮影シーンで覚えたフィボナッチスパイラルを意識して構図を作るのです。

以前、私はこの構図を知ったばかりの頃「カメラにもグリッド線のようにフィボナッチスパイラルを表示できれば良いのに」と思っていました。しかしそのようなカメラは有るのかもしれませんが稀です。ここ、大事なポイントなのですがフィボナッチスパイラルはグリッド線のように合わせるものではなく、あくまで感覚でつかんでみましょう。人間のDNAにもある神秘の曲線な訳ですから、そういった意味で感覚が最も精度が高いと私は信じております。




実際には難しいです。まずは曲線の要素を探すよりも最初に渦巻の中心にバイクなどのメイン被写体を置いてみます。その上で曲線上に配置できるデザイン要素を見つけてアングルを探り当てていきましょう。

もしフィボナッチ螺旋構図が成功すれば、それはレオナルドダヴィンチなどの芸術作品に通ずる優れた構造を持った写真が実現できる訳です。

ステップアップの1つの目標として次の撮影で挑戦してみてくださいね。今回はこの辺で!!

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上級者の秘密テク☆深度のピークをコントロールする妙

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、今回は久しぶりに<上級>ツーリング写真解説をいってみたいと思います。今から2年前、私はこのブログを立ち上げたばかりの頃にツーリング写真の撮り方の解説として<初級><中級><上級>と3つのカテゴリーに分けて解説を作り始めました。

写真の撮り方のノウハウなんて普通は秘密にするものですし、基本的なことであればマニュアル本にもネット上にも情報は溢れています。世に存在している写真の撮り方とは大半が初級者向けのカメラ操作方法ばかりです。ビギナーを卒業しているはずの人でも最初に教わった基礎に縛られてしまい、それ以上の知識を得る機会が少ないな…と感じてこのようにしました。そして写真を好きになるとは、写真を楽しむには、といった写真を中心としたビギナー向けの情報が乏しいとも感じたのでその辺も最近は書くようにしております。

私のような人間が上級者向けの内容を書くなどまことにおこがましい…という事は承知の上でやってみようと思いました。「ぜったい偉い人に怒られるな」と当初は予想していたのですが、幸いなことに今のところ誰にも怒られておりません。




さて前回と前々回でツーリング写真、バイク写真に使う三脚のお話、そして三脚をバイクに積載するにはどうしたら良いか、という投稿を書きました。

前回の投稿はこちら

前々回の投稿はこちら

この解説の時に撮った作品で今回は被写界深度とピントピークのコントロールについて書いてみたいと思います。

EOS6D Mark2

まずは完成した作品からご覧ください。この冬の季節、南房総からは東京湾ごしに富士山が美しく見えるものです。また海は紺碧色で空気は澄んでいて冬の房総の海岸線は本当にバイクで走ると気持ちいいなと、30年も千葉をツーリングしていますがいつもそう思います。

いちおう<上級>ツーリング写真解説とはいえ、いつも通りこの作品の基本的なプロセスを最初に解説しておきます。まずFactorの解明ですが、ここで撮ろうとバイクを停めた理由は美しい東京湾ごしに見える冬の富士山にアンテナが反応したこと。Real side分析では富士山まで遠い、海が青い、撮影スペースはかなり広い、タンカーやコンテナ船が頻繁に行き交っている、トビが飛んでいる、など作品に使えそうな素材をピックアップしました。heart side分析ではとにかく全体が青の印象として感覚に刺さったこと、日本の玄関口である東京湾の様子とトビの演出で何となくStory性を作れそうだと予感したことです。

左 F6.3                     右 F14

<上級>ツーリング写真なので基本的なことはサラっと解説します。この撮影シーンではR1200GS-ADVENTUREの各パーツに入ったハイライトを使って玉ボケで表現してみました。F14まで絞り込んだ右よりもこのレンズで解放となるF6.3の方がキラキラと抽象的で私好みだったのです。画面全体は望遠レンズによる強烈な圧縮効果で富士山も海面の青も見る側へ圧力的にアピールします。

いくら絞りを解放に設定しても、ある程度から遠くにある部分は被写界深度が深く発生することは上級者の方でしたらご存じだと思います。そして深度は奥行方向に山になっていてピークが存在がします。ピークは最もシャープになる合焦ポイントですが、解放と違って深度が深い場合についてはピークもある程度の奥行きが存在するものです。




☆ここでワンポイント なぜMFを使うのか?

ではそのピーク位置をどこに置きましょうか?もちろんAFではなくMFを使用します。AFはスポーツシーンなど動く被写体を追従する時などに必需ですが、こういった風景写真の場合は被写体との深度の兼ね合いを考慮してMFで精密にコントロールしてみましょう。

カメラのAF機能は深度と被写体の兼ね合いまで考えて動作する訳ではありません。あくまでピントピークを特定の被写体に合わせることしか出来ないのです。

この作品の場合はとにかくR1200GS-ADVENTUREの車体に入る玉ボケのハイライトを美しく表現したい一心でした。そのための手段として開放F6.3で発生した深度とそのピントピーク位置をこの写真の最も遠景となる被写体、富士山の頂に合わせてみました。ピークが思いっきり遠くになったことで、R1200GS-ADVENTUREの玉を大きくしたのです。

これがもしピークを対岸の久里浜や沖合の船に合わせたとしましょう。それでも富士山の頂はシャープに写りますが、F6.3程度ではこれほど大きな玉ボケは作れません。

例えば300mmの望遠レンズで50m先に被写体A、70m先に被写体Bがあったとします。AとBの両方にピントを合わせたいとき、最低必要な被写界深度を出すにはF11だとします。AとB以外の背景や前景はなるべくボカしたいとなったとき、ピントピークの位置はAとBの真ん中となります。AFを使ってしまうとAかBのどちらか一方にピークを合わせてしまうので、両者にピントを持ってきたい場合はF11では深度が足らなくなってしまい、さらに絞れば背景や前景のボケ具合が甘くなってしまいます。

深度のコントロールとピントピークの調整は必ずMFで行う理由はこれです。

絞り込みボタンを押し込みながらフォーカスリングを回す

ピントピークの位置調整は難しいのでお勧めのやり方をご紹介します。まずレンズをMFにしてライブビューさせます。そして絞り込みボタンを押し込んでみましょう。

絞り込みボタンを押し込んだままの状態でフォーカスリングを回し各被写体の合焦を確認しながら調整します。私のSIGMA150-600mmF5-6.3DGの場合はピントリングを左に回していくことで、合焦ポイントは遠景に向かっていきます。拡大表示させる部分はコントラストのはっきりしている部分を探してみましょう。もしR1200GS-ADVENTUREに合焦させるのであれば上の写真のようにBMWのエンブレムが分かりやすいです。皆さんもご自身のバイクでピント確認しやすい部分というのを見つけて決めておきましょう。




このようにピントをかけたい2つの被写体を狙い、絞り込みボタンを押しながらピント調整する一方で、通常の方法としては絞りは解放にしてピーク位置だけを確認するやり方もあります。一般にはこちらが正しいのかもしれません。カメラのファインダー像が通常時は解放で写っているのも、ピントピーク確認用としてそうなっているのかもしれません。ただ今回の作例のように被写体Aと被写体Bの真ん中に目印になる物が何もない場合は困ってしまいますが(上の作品だと海のだいぶ沖らへん)。

最後に作品の深度のお話以外の部分を補足しておきます。絞り値の比較写真ではヘルメットを置いている位置がR1200GS-ADVENTUREの足元ですが、完成写真では画面のちょうど左下の角に置きました。光沢のあるヘルメットであれば、これもハイライトが玉ボケになってくれると思い、画面の中で印象の弱かった左下をヘルメットに補ってもらったのです。そしてコンテナ船は明瞭に写っていませんが、これは冬の東京湾でよく見られる蜃気楼のような現象によるものです。その証拠としてずっと手前に存在している鳶には合焦しています。

今回の解説としては蛇足ですが以前に解説した7つのプロセスの最後【奇跡の待機】によってラッキーを授かりました。鳶が登場し鮮やかに作品の主役を奪っていった・・・その瞬間をとらえることに成功したのです。これが写っているのを確認した瞬間「やはり写真の神は私の味方だな」と勝手に膝を叩いて喜んだものです。

どんなに静かに見える風景でも写真とは瞬間なのだ、という事を忘れずに撮影に挑みましょうね。

今回はこの辺で!!

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↓↓↓撮影地↓↓↓

ちなみにこの撮影ポイントから富士山の頂まで、直線距離で測定してちょうど100kmでしたよ。