BMWの金字塔 R1200GS 空冷モデルを再考する

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アドベンチャーバイクと聞いてその意味の通じないライダーはいない…そう言い切っても良さそうな昨今。バイクメーカー各社からアドベンチャーバイクがリリースされていますよね。アドベンチャーバイクの近似カテゴリとしてフロントに21インチを履かせた650㏄クラスのオフローダーや林道ツーリングに特化した250㏄トレッキングバイク、小型クラスもCT125、ADV150などオフロードテイストをまとったバイクが人気を博しています。

さらに4輪業界に目を向ければ各社の主力はSUVですし、スズキジムニーについては説明不要の人気ぶりです。キャンプブームなども考えると今【アウトドア】【オフロード】がムーブメントなのです。

そういった兆候を約20年前にいち早く先取ったBMWのGSシリーズはアドベンチャーバイクの祖です。もはやアドベンチャーバイクはブームではなく新たなバイクカテゴリーとして確固たる地位を築いたと言えます。

2001年 R1150GS-ADVENTURE このボリビアのプロモーション写真に強い衝撃を受けました

その証拠としてBMW R1150GS-ADVENTUREが最初に登場してから既に20年余。その人気は衰えるどころか次々と派生モデルが登場し、ドカッティやあのハーレーまでもがアドベンチャーバイクをつくる時代です。国内4メーカーについては全てのメーカーでアドベンチャーモデル(またはアドベンチャーテイスト)が存在しますし、250㏄クラスのダウンサイズアドベンチャーについては売れ行きも堅調のようです。

2004年ころ、R1200GSが登場した当初はその白熱した人気ぶりの影に「オフロードに行かない人も買っている」「日本の狭い林道では持て余す」とか、その高い走行性能に「下手でもコーナーが速い」とかネガな反応も散見されたものです。

これは当時はまだツーリングをスポーツ感覚で楽しむ「スポーツツーリング性能」というものがバイクを評価する尺度として認知されていなかったのが原因と思われます。R1200GSは「何やら見たことのない様子のバイクだ」と奇妙な目で見られながらも、バイクファンからはビッグオフローダーだと思われたのですね。




いいバイクとはカッコいいこと、高性能であること、快適であること、安全であること、贅沢な装備、利便性、信頼性、車体の持つ雰囲気などで評価されていました。もちろんこれらは現在でも大きくは変わりませんが、スポーツツーリング性能は注目されていなかったと感じます。

そのためR1200GSの評価はオフロード走行性能で判断されていたのです。今でも記憶に残っているのは砂に沈んでいくフロント…限界付近でインフォメーションが希薄…といった低評価です。今になって振り返ればラリーやレースに出るバイクではないのですからソコを指摘してもお門違いではと感じます。

今、何かと話題のハーレーのアドベンチャーバイク パンアメリカ

昔からツーリング性能に特化したツアラーというバイクは存在していました。GSシリーズがブレイクするずっと以前からBMWが得意としていたカテゴリです。BMW K100RSとかR1100RT。ヤマハならFJR1200とかですね。これらのツアラーは主な用途としてハイウェイを超高速で移動して立派なホテルに宿泊しラグジュアリーな旅をするヨーロッパで言うグランツーリズモでありました。

これら従来のツアラーは路面の綺麗な高速ワインディングでしたら楽しめました。しかし日本の山間部によくあるような道幅が狭く路面が荒れているような場面においてはたちまちナーバスになるものでした。ましてや舗装が切れて砂利ダートにでもなろうものなら背中に冷や汗が流れる感触を覚えるものです。これについてはツアラーに限ったことではなく多くのオンロードバイクが苦手とするシーンでした。そう…通常、オフロードバイク以外のバイクは舗装路を前提として作られているのです。

先代アフリカツインや同じく先代スーパーテネレなど【ビッグオフローダー】と呼ばれる大排気量のオフロード車は以前より存在していました。これらは現代のアドベンチャーバイクと意味合いが混同されがちですが、あくまでラリー競技で培ったノウハウを投入したパフォーマンス志向のカテゴリーです。もちろん市販車はツーリングで使用しても素晴らしいのですが、キャラクターとしてはあくまでパリダカールラリー等の競技で活躍したマシーンの市販バージョンです。

R1200GSアドベンチャー

R1200GSのような現代のアドベンチャーバイクとはこれらツアラーとビッグオフローダーの言ってみれば混血であり、偶発的に生まれたツーリングの優等生なのだと思います。「偶発的に」と書いたのは近年のBMWニューモデルを見ていると20年前、R1200GSを生み出したBMW開発陣は、果たしてスポーツツーリング性能を純粋に追求してこのように作ったのだろうか?と疑念が拭えないからです。たまたまこうなったのではないか??と。

ニューモデルを悪く言うようなことは避けたいのですが、BMWは近年になって競合他社からアドベンチャーカテゴリーのシェアを奪われまいと必死にもがいているようにも見えます。もちろんビジネスの観点では他社の追従を許さず常に戦うのはごく当たり前のことです。しかしその手段がパフォーマンスやハイテク装備の一辺倒で本当に良いのでしょうか?BMWが現在でも独自のポリシーのあるマニュファクチュアであるならば、かつてR100RSを登場させた時や2004年にR1200GSを生み出した時のようなセンセーショナブルを期待せずにはいられません。

まあ…最新モデルを受け入れるのに抵抗を感じるのは、私のような悪い意味で目の肥えたベテランに限った問題かもしれません。かつてOHV世代のGSユーザーがR259系のGSへと進化した様子をみて、彼らはそろって「こんなのはGSではない」と口を曲げたものです。そういった意味ではこれからバイクデビューするニュージェネレーションにとって、最新のR1250GS/ADVENTUREのハイパフォーマンス、充実のハイテク装備は歓迎できることだと思います。バイクの進化とは常にその時代に合ったカスタマーとのフィットであると考えるのが正しいのでしょうか。




EOS6D Mark2 + EF70-200mmF2.8L

80~90年代、世界中の二輪市場を圧倒的に支配していた日本の4メーカー。その勢いに一時は二輪から完全撤退も考えたというBMW。続投を決めてからはこれら日本メーカーとの差別化を計る糸口として【安全性能】に特化しようとしていたのです。サーボ付きのABS、路面を追従する独創的なサスペンション機構。信頼性の高いカルダンシャフト。これらはツーリングを愛するマニアからは絶大な支持を受けていましたが、時代はレースからインスパイアされたスポーツバイクが中心でした。そのため日本ではあまりBMWを見かけることはありませんでした。

しかし時代が変化すれば市場も変化するもの。カスタマーの心理とは実に気まぐれで「今はこれ」と新たな風がふけば、手のひらを返したように全く異なるジャンルのバイクへ乗り換える人は多いものです。2000年代はまさにそんな変化の時代でレーサーレプリカブーム、第三京浜のモンスターマシーン、カスタムしたビッグスクーター、洒落た原宿のストリートバイクとった流行は過去のものとなり、ツーリングに注目されるようになったのです。

90年代にあった免許制度の変更も手助けとなり大排気量車でロングツーリングに行く、という新たなバイクの楽しみ方がやってきたのです。BMWはそれまで堅調なセールスだったR259血統のR1150GSを大胆にもFMCさせ驚異的なスポーツツアラーであるR1200GSを登場させました。それは従来のGSシリーズとは異なる軽量な万能ツアラーであり軽快なハンドリング、ハイウェイ巡行能力、長距離走行での快適性、オフロード走破性能、そしてスポーツツーリング性能。どれかが特化している訳ではないけれど、どれも平均点を大きく上回る驚異のバイクだったのです。

そしてBMWからR1200GSの派生モデルであるR1200GS-ADVENTUREが登場し、オフロードの専門KTMからは990ADVENTURE、テネレで名をはしたヤマハからはXT1200Zスーパーテネレが登場し、以降いつの日かこのようなバイク達が【アドベンチャーバイク】と呼ばれるようになりました。

その後、ホンダ、スズキ、ドカッティ、カワサキと次々アドベンチャーバイクを出しBMWのベストセラーR1200GSに追いつけ追い越せと盛り上がったものです。一時、ブームが沈着か?と思われた時、スクランブラーブーム、カフェレーサーブームなどがありましたが、それ以降もアドベンチャーカテゴリは一定の人気を保ってやがて650㏄クラス、250㏄クラスにまでその波を及ぼしました。

EOS6D Mark2

R1200GSをはじめとするアドベンチャーバイクがこれほどまでに成功した要因の一つとしてライディングポジションがあります。乗車姿勢での上半身はオフロードバイクのそれと全く同じで垂直に立ったアップライトな姿勢。これはハンドリングの自由度が大きいだけでなく、景色を気持ちよく見渡せるのでツーリングを愛するライダーから支持されるものでした。

通常、前傾姿勢のオートバイだと背骨の曲がりがC字カーブを描き椎間板への圧迫があり腰痛の原因でした。一方、オフロードバイクのようなアップライトな姿勢は背骨がS字カーブを描く自然な姿勢であり非常に腰に優しいのです。

その昔、借り物のCBR1000RRで一日ツーリングをしたことがありましたが、帰った頃には首、肩、腰、手首、股間、尻、膝が痛く酷い疲労感に襲われたものです。

R1200GSの車高が高く厚みのあるシートは何かと足付き性の悪さばかりが取り沙汰されていますが、ひとたび走り始めてしまえば膝の曲がりは緩やかで下肢の窮屈さはなく快適そのもの。長時間のライディングでも尻や腰など体の特定の場所に痛みが発生することはありません。日帰りで1000㎞以上走ってしまう弾丸ツーリングでも帰宅してから元気が残っているのです。

あらゆる道で素晴らしい走りをみせる車体にオフロードバイクのポジション。ライダーを無駄に疲労させずに安全に楽しくツーリングできる究極のスポーツツアラー。それがR1200GSをはじめとする現代のアドベンチャーバイクの条件ではないでしょうか。




EOS1Dx + EF14mmF2.8L F16 1/30 ISO250

R1200GS・・・大きくて軽い、走り始めれば小さくなって人車一体となるスポーツツアラー。

R1200GSは2012年のフルモデルチェンジでシリンダーヘッドが水冷化された通称R1200GS-LC(最近ではそう呼ぶことも減ってきました)へと進化しました。パワーやトルクなどのパフォーマンスアップ、クルコンや各種走行モード選択などのハイテク装備、スマホのようなTFTメーター・・・この辺の進化の具合を見ていると時代に合わせた正常進化とも受け取れるし、他社の追従を振り切るためのパフォーマンスアップとも受け取れます。

前述もしましたが近年のBMWニューモデルを見ていると、ツーリング性能に特化したメーカーという印象が薄れてきたようにも感じます。歴史の長いGSシリーズはR80G/Sを起源とする進化の過程で、R259(R1100GS)の時にツアラーとの混血を選び、アドベンチャーバイクの地位を確立、そして隔世遺伝で生まれた天才児のように誕生した2004年R1200GS。何をルーツにこうなったのか良く分からないようなツーリングの優等生はバイク界に新たな風を吹き込んだのですね。

そういった意味で私の愛車である成熟のフェイスリフトを経た中期型2008’R1200GSは本当に特別なバイクなのではないか?愛車贔屓を差し引いて考えてもそんな風に思えます。単純に自分と言う人間に見事にフィットしているだけ…という事かもしれませんけどね。

最近になって空冷モデルのR1200GSはさらに中古相場がお安くなったように見受けます。少々の過走行であっても耐久性の高いバイクなのでトラブルの心配は少ないですし、走行距離の分さらに安いのであればお買い得です。万一、何か問題があっても空冷R1200GSはBMWで記録的な売り上げを誇ったベストセラー車種。中古部品の流通量が豊富であり、ネット上での情報も多いです。そういった意味でも「はじめて輸入車を買う」という人にもお勧めのバイクと言えそうです。

バイクで旅にでる「バイクツーリング」という素敵な生き方を選択した人にとって、自身の旅のスタイルにぴったりな相棒を選択したいものですね。私はオートバイの旅においてスポーツ性能は軽視できない要素の一つであります。オートバイとはその走りでライダーに何らかの感動を与えてくれるもの…それがどのようなものが良いのか?は個人の好みによりますけどね。

今回はこの辺で!!

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