フレームで切り落とし心理的想像を誘うツーリング写真

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、花粉症には辛いツーリングシーズンですが如何お過ごしでしょうか。どうでも良い私事でございますが先日、古い写真を整理していたらこのような物が出てきました。

25年くらい前ですが車でサーキットを走っていた頃の写真です。サバンナRX-7(FC3S後期型)でナンバー付きクラスのサンデーレースですね。車高調にLSD、ブレーキ強化とライトチューンで日光サーキットなどを走っていました。

この写真の頃は17インチのSタイヤ(公道走行可能なサーキット向けタイヤ)を履いていたので賀集スポーツというショップのシリーズ戦だと思います。この草レースは非常にレベルが高くてシリーズ中で表彰台に入ったことは一度しかなく、ほとんどギリギリ入賞という感じでした。当時のトップクラスの参加者には今では有名なプロのドライバーもいましたね。

しかしこの写真、昔サーキットでよく見かけた写真屋さんが撮ってくれたものでレーシングフォトサービス2次元…だったかな、とにかくカッコよく撮ってくれるので、つい毎回購入しちゃったのを覚えています。この写真は日光サーキットの最後コーナーでゼロカウンターのドリフト進入でクリッピングを目指す瞬間を見事にとらえてくれました。

写真ってこうやって過去の時間を残してくれる「思い出」として本当に尊いものだなと、当たり前のことを改めて実感しちゃいました。




さて、前置きが長かったですが今回は少々変わったネタでツーリング写真解説をいってみたいと思います。マンネリで困っている人は必見。

EOS6D Mark2

はい、こんな変わった写真です。何の小屋でしょうね…海岸にある道具用の倉庫でしょうか。浸食されたコンクリートの様子と木製の扉が印象的です。旅先で出会う【扉】という被写体には特別な何かを感じます。

中はどうなっているのか?誰か出てきやしないか?想像をふくらませると好奇心と恐怖が入り混じったような緊張感を覚えます。このユニークな被写体をツーリング写真で撮らない手はありません。小屋と扉のもつ雰囲気を最大限に伝えるように安定構図を作って、Storyの演出としてR1200GSとライダーの姿で挟む構成としました。

ライダーの体をフレームで切り落とすことで、扉という主題の存在感を強めるとともに、フレームの外の様子はどうなっているのか?と見る側へ想像を誘います。このような手法は映像の世界ではよく見かけるもので、特にサスペンスやホラー映画では常套手段といえる手法です。けっこうクセの強い表現方法ですからたまにやるくらいで丁度よいかもしれませんね。




しかも、よく見るとこの写真…小屋の右に小さく人影があります。実際に人がいたので幽霊ではありませんが、パッと見て少しの時間差でこれを見つけてドキッとする写真になりました。通常、このように関係ない人などが写ってしまった写真は不採用ですけど、今回は面白いので敢えて採用カットにしてみました。

ちょとしたトリックや謎めいた雰囲気をもった写真は好みの分かれるところですが個人的には悪くないのかな、と感じます。ツーリングをしていて何か惹かれる不思議な被写体に出会ったら、こんな風にフレームで切り落とす手法をやってみてはいかがでしょうか?おもしろいですよ。

今回はこの辺で!!




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バイク写真、ツーリング写真の撮り方のポイント

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、コロナ渦も少しづつではありますが収束の傾向が見え、加えてワクチン接種も国内ではじまったようですね。明るい先が見えてきた気がします。明けない夜はないのと同様にこの辛い時期を凌げばまた夢をもてる日がくるはずです。

まずは季節的にライダーの待ち望んだ「春」なのですから、心は明るくいきましょう。お花見は自粛を…と言われますがライダーは宴会をする訳ではないのですから、桜のある風景を楽しむツーリングの計画を立てましょうね。お弁当持参で。

この季節、バイクウェアーやツーリング用品なども各メーカーから新製品が登場するので、まずはツーリングギアを新調して気分だけでも上げてみるのも良いかもしれません。私は今、ガエルネのGストーンというブーツが欲しいです。

さて今回のツーリング写真解説では桜の風景を作例に、背景がイマイチだな…という場所での撮り方を解説いたします。




前回もご紹介しましたが、また千葉県南房総にある頼朝桜(河津桜)の風景で解説いたします。この写真は頼朝桜で有名な鋸南町の保田川で撮影しました。

この写真のままでも悪くはないかもしれませんが、これでは究極のツーリング写真とは言えず、大衆的な平凡ツーリング写真ですよね。何がどう平凡なのかと言えば細部の完成度の低さです。いちおう木の幹を意識して広角レンズで寄って構図を作った写真ではありますが背景が悪すぎます。

桜の向こうにはビニルハウスがあって太陽光を反射しているし、R1200GSの向こうには民家が写っています。時間帯は午前で南向きで撮っているので画面の左から太陽光が差す斜光です。頼朝桜特有の濃いピンク色は出たかもしれませんが、果たしてこれで頼朝桜を魅力的に撮ったと言えるでしょうか?

この地域の観光ガイドに使う説明的な写真を撮る訳ではありませんので、現実的な様子を伝える必要はありません。多くの風景で現実の様子とはさして美しくはないものです。写したくないマイナス要素は徹底的に画面外に排除です。

そこで、撮る位置を変え余計なものが写らないよう工夫をしてみましょう。まったく違う場所から撮ることで当初のイメージはゼロから作り直しとなりますが、視点を変えて試行錯誤するのは大切なことです。今回は川の土手に降りて低いポジションからローアングルで撮ることに挑戦してみました。




土手に降りてローアングルで撮影したことで背景は空だけになり、頼朝桜の存在感は一気に際立つようになりました。原則、背景とはシンプルであるほど被写体は際立つと覚えておきましょう。

しかし南向きで撮っていたのが東向き、しかも空に向かって撮ることになったのでド逆光となってしまいました。しかも画面内に太陽がばっちり入るほどの。

逆光で撮る場合は彩度が期待できないトレードオフとして強いコントラストを得て印象的な写真が撮れるようになります。今回は被写体が「花」ですので花びらには透過や反射といった様々な光の反応が発生し、当初の写真よりも印象的で美しいものになりました。

こういった場合、カメラの評価測光は機能しなくなるので、ド逆光の場合はうんとプラスへ補正するか、ベテランであればマニュアル露出でイメージ通りの明るさを得ましょう。

…どうでしょう?ここでフィニッシュでも良いのですが、この時の私はまだ納得できませんでした。撮影現場では「その時、自分が納得できるまで撮り切ること」が鉄則です。「またいつか来ればいいや」は絶対にやめましょう。…という事で、まだ何かできないか?ひとひねりのユニークや奇跡はないか…とクリエイティブタイムの第二ラウンドです。

先ほどの撮影ポイントよりさらに2~3mほど下にスイセンが咲いていました。スイセンの存在には当初から気が付いてはいましたが、35mmで撮るには少々バイクから離れすぎかな…と思ってキャスティングしませんでした。こういった時はズームレンズの方が便利ですね。しかし、このスイセンは良く観察すると傷んでいる花弁など1つもなく、実に見事に咲き誇っていたので敗者復活のキャストとして採用としました。




レンズの目の前にスイセンを置いて3レイヤーの構図を作りました。この場合、極めて深い被写界深度を要求したいのでFを絞り込むのですが、強烈な逆光の場合は回折現象(小絞りボケ)の問題も発生します。何度か試し撮りしてプレビューし、写真クオリティ面と欲しいイメージの両者で折り合いをつけるように絞りを決めました。

ところでこういった木などの向こうに太陽がある場合、カメラの位置を少し動かすだけで太陽を木で隠したり、半分だけにしたりと調整できるものです。露出は通常はカメラの側で調整するものですが、このようなシーンでは風景サイドでも露出は調整できると覚えておきましょう。もしレンズの特性上、許容しがたいゴーストやフレアなどが発生した場合は、太陽を木に隠して試してみるのも妙案です。

古くから写真は引き算、と言われてきましたが被写体がその場所で最も魅力的に見えるようにするにはどうしたら良いか?を考えると、まずは背景にある余計なものを排除ですね。そして今回のスイセンのように時には足しても悪くはないと思います。

今回はこの辺で!

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完璧な手ブレなし写真でツーリング写真のクオリティアップ☆

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、前回の投稿でアップした心霊ツーリング小説はいかがでしたでしょうか?あのお話は半分フィクションですが、そこが宇曽利山湖と知らずに野宿してしまったのは本当です。今になって考えると私のツーリングキャリアの中で最も猛省すべき行為でした。良い子は絶対にマネしないように…

ところでキャンプ場ではない場所で野宿するのはいけないことでしょうか?これ難しい議論を呼ぶところですが少なくとも野宿という行為が法律にふれることはないようです。自然環境であるのか、明確に区分された他人様の土地ではないか、周囲の状況をよく見て十分に配慮すれば、奥深い自然の中で野宿するのは素晴らしい文化だと思います。ただひとつだけ確かなことはキャンプブームであれだけの問題が洗い出されたのを受けると、間違っても「野宿ブーム」は起きてはならないと思います。




さて、今回の<初級>ツーリング写真解説では写真ビギナーの方がついやってしまうミスの代表選手である「手ブレ」のお話をさらっと書いてみたいと思います。

先日、こんな写真を撮ってみました。千葉県鋸南町保田にある佐久間ダム親水公園の頼朝桜です。頼朝桜とはこの地方での河津桜の呼び方ですね。早咲きの桜なので2月中旬から3月初旬くらいが見ごろとなり、2月中でしたらご覧のように水仙とのコラボも見れます。

さてこの写真ですが、この大きさで見る限りは特に問題がないように見えるかもしれません。実はこのカットはベストアングルを出すまでの試し撮りカットでカメラを手持ちで撮影しています。以前にも書きましたがツーリング写真のような風景写真を撮るときに、いきなりカメラを三脚に固定してしまうとアングルを探るのに自由度が奪われてしまいます。まずは手持ちで試し撮りして納得のいくアングルを見つけたら、本番カットとして三脚にセットし、先ほど見つけたベストアングルの再現をします。

この試し撮りのカットですが拡大表示するとこんな感じです。そうです、拡大してようやく明らかになりましたが微妙に手ブレですね。135mmという中望遠の画角で撮ると考えるとシャッター速度1/60秒はちょっと手持ちでは厳しかったようです。もちろん試し撮りカットなので気が緩んでいたからカメラホールドも甘かった、というのもありますが。

風景写真の場合はカメラの前に被写体を置かないとすると、原則としてF8~F11程度まで絞り込んで撮るのですが、そこまで絞るとよほど明るい場所でない限りはシャッター速度も1/100秒以下に落ちてしまう訳です。

ビギナーの方はシャッターボタンを半押しした時に露出値を読み上げる習慣をつけて、手ブレを誘発するようなシャッター速度の低下がないかよく意識しましょう。この写真はSNSにアップする程度でしたら耐えられるクオリティかもしれませんが、もしこの作品を4つ切Wサイズにプリントしたいとなった場合、このブレは完全にアウトです。

はい、これは三脚にカメラを固定して撮った本番カットの拡大です。先ほどの写真とは全然違い、ブレがなくクッキリと明瞭であるのがお分かり頂けると思います。手ブレは誰がみてもソレと分かるブレッブレッのものから、拡大表示してはじめて確認できる微細なブレまで程度は様々です。微細なブレも起こさないよう写真クオリティ面の意識を高めていきましょうね。

その為には撮る時の露出値をよく確認すること、撮った画像をプレビューしたら細部を拡大表示してブレをチェックすること、この2つがポイントです。




それから手ブレ補正機能のあるカメラ(またはレンズ)をお使いの方は、三脚にセットしたときは忘れずに機能をOFFにしておきましょう。これを忘れてしまうと三脚に固定して撮ったのにブレ写真が生まれてしまいます。それとせっかく三脚にカメラを固定したのですからシャッターは手押しではなくタイマーかリモコン操作でいきましょうね。

ところでこの写真、1:1.618の黄金比にもとづいた神秘のフィボナッチ数列【黄金スパイラル構図】です。久しぶりに挑戦してみましたが、やっぱりしっくりきますね。カメラにはフォボナッチスパイラルを表示する機能がないので、だいたいこうかな?と感覚で合わせるのですが、私もまだまだ甘いようで少々トリミングして調整しました。




EOS6D Mark2 + EF135mmF2L

完成はこんな感じです。左からの斜光によって空間に光が差している場所でした。その場所にどんな光がどう存在しているか?それを意識してどこから撮るか?どのような露出にするのか?を考えます。この写真を見て何となくお分かり頂けるでしょうか?

私もこの辺の光と影、被写体の反応、露出と構図といった関係性は最近になって少しづつ理解してきた感じで、まだまだ勉強中の段階であります。

今回はこの辺で!!

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三途の川と血の池ツーリング

2008年8月

一週間前、千葉にある職場から仕事を終わらせて、そのまま旅の荷物をパッキングしたR1200GSに乗って東北自動車道を北上した。岩手山SAで仮眠し青森港からフェリーで函館へ。この時はとにかくたっぷり走りたかった。まだ新しい愛車であったR1200GSからも「たっぷり走ろうぜ」と誘われている気もした。

今回の旅は函館からニセコエリアに入り、ニセコパノラマラインを走って日本海側へ、小樽から海沿いに天塩方面へ走りオロロンラインを経て稚内。最北エリアを楽しんだら美深へ向かい道北スーパー林道のロングダートを楽しんで富良野、美瑛エリアと花人街道を南下。日勝峠を越えて屈斜路湖まで行ったら再び海を目指して知床半島。そこから北太平洋シーサイドラインを走り根室エリアの最果てを味わう。最後は黄金道路を襟裳岬まで走って海沿いから伊達市を通過して函館に戻るという、北海道ツーリングのフルコースだ。

加えて大洗~苫小牧のフェリーは使わず、東北自動車道を自走する計画なので全ての行程を合わせると5000㎞にもせまるロングツーリング。それだけ走っても疲労感は少なく「まだまだ走れるけどね」とR1200GSは言う。長旅の7日目にして実に頼もしいバイクだと感じさせてくれた。

しかし、さすがにお盆休みに有給休暇をつなげた8連休。さらに休むわけにはいかない。北海道の全工程を満喫し道内の最終日はアルトリ岬キャンプ場を出発して登別温泉を楽しんでから函館港へ直行し帰路を目指した。函館港フェリーターミナルは一年ほど前に新しい建物にリニューアルされ、まるで空港を連想するような近代的で立派な施設へと変貌していた。

新しいのは良いことだけど一人旅の雰囲気が似合わず観光色が強まった感じで少し寂しい。予約していた便よりもだいぶ早く到着したので、カウンターでもう少し早い船に変更できないか?と尋ねると、ちょうど新造船の高速船にキャンセルが出たので今すぐ乗れると…。ちょっと料金が高かったが、受付のお姉さんが「お客様はラッキーです」みたいな言い方だったので、まあ良いかと思って新造船【ナッチャンWorld】とやらに乗ることにした。

しかしこのナッチャンWorldという高速船、驚いたことに海面から浮いて航行するジェットフォイル型であるにも関わらずカーフェリーというすごい船。船内も空港のラウンジサービスのような高級感がある。いざ出港すると乗っていて速いのが分かるほど高速で揺れも少ない。料金が高いのも納得で良く見ると他のバイクも輸入車ばかり…自分のバイクも輸入車だけど、少し場違いな感じがした。




通常の船と違いあっという間に青森港へ着いてしまった。予定よりもだいぶ早いので下北半島をツーリングして今夜はむつ市にある国設薬研温泉キャンプ場に泊まろうと決めた。国設薬研温泉キャンプ場は北海道ツーリングするライダー達が渡道、または戻りで一泊する定番のキャンプ場だ。この日はお盆休みのUターンラッシュと重なるため混雑が予想される。

「混んでいたら嫌だな」そんなことを考えながらR1200GSを走らせていると、何やら辺りが重苦しく荘厳な森の風景を走っていた。恐山だ…。日本三大霊場といわれるこの地は極楽浄土の景色が見れると聞いたが本当だろうか?心がなんとなくザワザワする感じを覚え、私はいま最もあの世に近いと言われる場所をR1200GSで走っているのだ。

ほどなく走ると日没が近づいてしまった。ちょっとのんびりし過ぎてしまったようだ。ここからキャンプ場はそう遠くはなさそうだけど、この時間に行ったらテントを張るスペースも限られているかもしれない。そんな風に思ったとき、目の前に息をのむような美しい湖が現れた。「うわっなんだここは、綺麗だな」まるで南国の海のようなアクアブルーに白い砂浜。その入り江は箱庭のような小さな空間で湖というより海だった。

間もなく日没だし明日は高速の渋滞を回避したいので午前3時には出発したい。キャンプ場でそれをやると迷惑だから、この場所で野宿してしまおうか…。辺りの様子を細かくチェックし、火を使わずテントを張るだけなら良いだろう…と思い、この美しい砂浜で野宿することにした。

MSRのテントを張り終える頃には周囲は魔時の雰囲気になり、山の稜線に沈みゆく夕陽が息をのむほど美しい。辺りは気味が悪いほどにシーンと静かだった。

美しい夕陽のショータイムを満喫してコンビニで買ってきたオニギリを食べ、明日は早いのでビールも飲まずに寝ることにした。7日間で走り切った疲労感が適度に気持ちよく3時まで良く眠れそうだ、とこの時は思った。

しかし、どうにもうまく寝付けない。寝袋の中でモゾモゾと動き回っては目が冴えて。静かな周辺がなぜか騒々しいような気配を感じてしまい、安心して眠るような気分ではなくなってしまった。

暫くすると一台のバイクの音が近づいてきた。250くらいの単気筒だろうか。そのバイクは私の近くまで来て少しの間止ってアイドリングしていたが、やがてエンジンを停止させた。「誰かくるな」と思いテントから出てみるとそこには懐かしいホンダAX-1に乗った若い女の子がいた。

AX-1の後部には北海道を旅してきたのか?たくさんの荷物が整然とパッキングされていた。ウェアーはこれまた懐かしい上野バイク街にあったCORINで売っていたファクトリーベアだ。派手な蛍光カラーと熊のマークが80年代していて、いま見ると新鮮だ。20年以上経った今でもよく手に入ったと感心してしまった。

彼女はヘルメットを脱ぎ笑顔で「こんばんは」と言った。小さな顔は80年代風に言うと小麦色に日焼けしていて、髪は三つ編みでツインテール。バイクもウェアーもライダーも全て80年代という感じで驚いた。




「あっ、どうもこんばんは。君も北海道を走ってきたの?」

「いいえ、私はずっとこの辺を走っているの。今日、ここでキャンプするの?」

「キャンプ場は混雑だろうし、明日は3時に出発するので少しだけね」

「それでしたら、私もご一緒していい?」

えっ、君もここで野宿するのか?女の子が?近くにトイレはあるけど、誰も居ないこんな場所で見ず知らずの男と2人でキャンプ? …戸惑ったが私の返答を待つことなく、彼女はAX-1の後部に積載された荷物を解き、テントの設営をはじめてしまった。

しかしこのAX-1、旧車をレストアしたとは思えない新車のような輝きを放つ。通常、カウルなどの樹脂パーツは退色するもので、綺麗に手入れしていても古い物は見れば分かる。しかしどうだろう?まるで新品パーツのような色をしている。ホワイトのキャストホイールも塗装し直したのか、掃除のしにくいハブの周辺まで真っ白だ。まるでタイムスリップしてきたようなAX-1だ。

テントはこれまた懐かしい80年代の蛍光パープルと鮮やかなイエローのダンロップ ダルセットシリーズだ。太いポールが現代のテントとの違いを感じる。かなり手慣れた様子で私のテントの3mほど隣にダルセットテントを設営した。

「私、妙子。いつもこの辺を走っているの。こちら側の浜は極楽だけど、あの川の向こうは血の池があって地獄なのよ。今はお盆だから賑やかね」

「はあ?」

最初は何の話をしているか分からなかったが、妙子の話を詳しく聞くうちに、ここは宇曽利山湖という湖で極楽浄土の浜、三途の川、血の池地獄がある霊場であり、いまは多くの死者がここへ集まる時期なのだと。そんな恐れ多い場所で私は何も知らずテントなど張っていたのだ。それは寝付けなかったのも納得だ。

時計を見ると20時をまわったところだった。

「知らなかった…それなら、バチ当たりだから俺はもう撤収して失礼するよ。」

と妙子に伝えたが「私がいれば大丈夫」とほほ笑むだけ。なぜ?彼女がいれば大丈夫なのだ?ここの番人であるかのように自信をもってそう言う。まあ、彼女もいまテントを張ったところで、そこで私が帰ってしまえばある意味失礼でもある。そう思い予定通り3時までここで寝ることにした。

「明日、俺は3時には出発しちゃうけど大丈夫かい」

妙子は微笑むだけで言葉を発しなくなった。やがて強烈な眠気が襲ってきて堪らず「もう俺は寝ちゃうね」と残してMSRテントの中へ滑り込んだ。その後、おそらく秒殺で熟睡したと思われる。

サーマレスト製のマットを砂浜の上に敷いた寝心地はちょっとした高級ベッドのような寝心地だ。夢の中でもその心地よいフワフワ感に包まれ、見えた訳ではないが辺り一面に花が咲き乱れ心地よいそよ風が吹いている中を寝ているようだった。

深い眠りの中でいい香りを感じた。夢なのか現実なのか曖昧なままその香りが何であるか記憶の糸をたどっていた。白檀の香りだろうか?それとも何か別の花かな。とても品があり高貴な香りという感じた。すると人の話し声が聞こえてきた。何人かの人が湖に立っている。それは宇曽利山湖ではなく別の風景で、そこにいる数人の人は見たことも会ったこともない男であった。

「誰だろう?何を話しているのだろう?」

あのう?どうされましたか?

尋ねても私の問いかけは虚しくも無視されているようだ。

「妙子がいない。妙子が帰ってこない」

「だから北海道に行くなんて、俺はとめたんだ!」

男たちはこんな会話で何やら妙子のことを話していた。

私は自分がなぜここに居るのか?ここがどこかも理解しないまま男たちに向かって

「あの~、AX-1に乗った妙子さんのことでしたら、宇曽利山湖でキャンプしていますよ」と告げると男達は私の方を見て不思議そうな顔をし、近くにある木を指し示してこう言った。

「あの木は衣領樹といって奪衣婆が死者から奪った服をかける木だ。枝のたれ具合でこの世の罪の重さを測るものだ」

その衣領樹とやらに目を向けると妙子が着ていたファクトリーベアのウェアーがかかっていた。枝は大きく垂れ下がり地面すれすれの位置だった。男の話がもし本当であれば妙子は既に死んでいて、現世での重い罪を奪衣婆に知られてしまったところだと言う。




そ…そんなバカな。再び男たちがいる場所へ目を向けると、もう彼らの姿はそこにはなく、代わりに幾つかの風車が水面に刺さって風を受けて回転していた。

「もういいのよ」

どこからともなく、妙子と思われる声が聞こえてきてハッと目が覚めテントの中で飛び起きた。2時45分… 変な夢だった。アラームをセットし忘れていたが、夢から覚めた瞬間が偶然にもちょうど良い時間だった。不思議なことにテントの中には白檀のような良い香りがまだ仄かに残っていた。

よく眠れたせいか体の中から清々しさが湧きたってくるような感覚だ。まるで夢の中でみたあの世界が極楽浄土であり、心身ともに清浄されたようだ。外はまだ真っ暗だが心は明るく、生まれ変わったような気分である。

テントの外に出ると妙子はもういなかった。テントもAX-1もない。それどころか砂地であるにも関わらず、AX-1が通ったはずの場所にタイヤ痕がないし足跡すら見当たらない…」

…早くここを出よう。

急に怖くなりテント撤収時間が僅か10分という最速タイムをマークしてR1200GSに火を入れて砂浜を出た。いちど停止しナポレオンミラーに目をやると、地面にあるはずの無かった一輪の赤い風車がそよ風にゆられてこちらを見ていた。

「…ありがとう。妙子さん、もう行くね」

東の空が明るんだ山の峰々にR1200GSのボクサーツインサウンドがひびいた。

※奪衣婆(だつえば)…三途の川のほとりにいる鬼形の姥。衣領樹(えりょうじゅ)…奪衣婆が奪った死者の衣服をかける樹木

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写真はプリントしてなんぼです!

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、今日から3月ですが春のツーリングを楽しまれていますでしょうか?コロナ渦が収束するまでソロツーリング、ソロキャンプしか楽しむことができませんが、事故にはくれぐれもご注意くださいませ。やはり一人ですと何かあった時に不安ですからね。

最近、改めて感じたのですが道路を走っている車の運転が本当に危ないです。何度も書いてきましたが優先道路であるこちら側を無視して割り込むように入ってくる車、運転に集中せず散漫な人、そもそもハンドルを握ることに対する責任の意識がない人、高齢者ドライバー・・・いろんな【ヤバい車】が道路上にうじゃうじゃ存在していて街中の道はカオスですね。

少しでも事故に遭遇する確率を下げるために交通量の少ない田舎道を走る、首都高などを止む得ず通過して遠出する場合は時間帯を選んで走りましょう。それから強風の日は飛来物にも注意です。看板や発泡スチロールの箱、産廃を積載したトラックの荷台から飛んでくる物も危険です。想像力を働かせて慎重に走りましょうね。




さて今回は、せっかく撮ったツーリング写真、そのまま画像データとしてスマホやPCに保存するのではなく、ぜひプリントをしてみましょう!というお話です。

これは去年に撮った写真ですが、いちおう私の中では左の2枚はツーリング写真として去年のベストといえる作品です。右は佐渡行きのフェリーから撮ったウミネコの写真ですが、これは部屋に飾ろうかと思ってプリントしました。

プリントサイズは4つ切りワイドサイズで額は以前もご紹介しましたがDAISOのA3サイズ対応の200円のものです。

写真って不思議なものでプリントにして手に取って見るだけで全然違うのですよね。仕上がった写真を額に入れて手に取ると特別な感情がこみ上げてきます。額装しても家の中に何枚も飾るスペースはないので、結局は額に入ったまま仕舞うのですけど、それでもプリントして額装すること自体には意味があると思います。

言ってみれば写真の最終形態であり撮る時点でこうなることをイメージして撮りたい…という感じのものです。私の場合は基本的にいつも4Wサイズプリントが完成イメージになっています。




プリント自体はファインプリントを望む訳でなければネットでも大きなサイズの注文はできます。有名なし〇まうまプリントでもOKです。一つだけ注意点があるとすると夜景や夕景など意図的に暗く撮った写真などについては、自動補正が入らないよう【自動補正】のチェックを外して注文することです。




DAISOの200円の額は人気商品のようで売り切れの場合も多いようです。私の場合はお店で見つけた時は2枚ほど買っておいて、常に家に何枚か在庫をもっておくようにしています。このホワイトの他にブラックもありますよ。

現代の写真文化ってSNSやブログなどネット上で発表まで完結してしまう場合が多いですが、あえてそんな時代だからこそプリントして手に取って見るのも良いものです。画像では見えなかったものも見えてきますし、自分は作品を生み出したのだ!という実感も感じられて次への活力にもなります。

ぜひ、皆さまも良い作品が撮れたなと思ったら、その写真をプリントしてみてくださいね。

今回はこの辺で!!

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