絞りをマスターして被写界深度を極めよう

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究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、承認欲求という言葉をご存じでしょうか?承認欲求とは他者から認めてもらいたい、立派な人、価値ある人であると思われたい…という欲求だそうです。承認欲求は誰にでも潜在している割と根深い人間の欲望なのだそうです。

お金持ちは社会に貢献している立派な人の象徴的なイメージなので、お金持ちに見せかけることで立派な人を装うことができます。だからお金持ちではないのに無理をして高級なものを身に付けたり見栄を張ったりする人は多いものです。最近は見かけなくなりましたがSNSを見ていると高級なレストランや海外旅行の様子をアップしてセレブレーションを気取っている人…いましたよね。あれも承認欲求に支配されてしまった人だと思います。

写真にも承認欲求はあります。上手な写真、すごい写真を撮ることで他者に立派な人だと思われたい。SNSで目立って「いいね」をたくさんもらい、有名グループでシェアされることで注目されたい。こういった欲望を写真で達成しようとする人がいます。承認欲求に支配された人の撮る写真は特徴があります。それはどう撮ったらウケるか?すごい写真で皆を驚かせよう、見栄えの良い「映え被写体」を追求するなど、写真は万人ウケが全てである!となるものです。こうなると誰が撮ったか分からない、みんな似通ったSNS時代の盛り盛りの流行写真、といったら聞こえはいいですが、お世辞にもART的な写真とは言えないものになります。

もちろん承認欲求が悪であると言いたい訳ではありません。私にも承認欲求はしっかりあります。人間は誰かに認めてもらいたいと誰しも思っています。ただ承認欲求をコントロールできず承認欲求に飲まれてしまった人は、永久に万人ウケ写真を追求する羽目になり、やがて疲弊して写真をやめてしまうでしょう

立派な写真を撮って認めてもらいたい、この気持ちは写真ビギナーの最初のモチベーション維持において良く機能しますが、どこかのタイミングで承認欲求と決別すべき日がやってきます。それは早い方が良いですよ…と私は言いたいです。




房総フラワーライン

さて前置きが長かったですが今回は写真ビギナー、または何年もやっているけど上達できない方を対象に絞りのお話をさらっと書いてみたいと思います。

究極のツーリング写真では今まで絞りに関するあらゆる事を解説してきましたが、おさらいの意味で基礎的なことと、絞りの知識を応用するにはどうしたら良いのか?という具体的なことを今までとはアプローチを変えて解説してみます。

絞りとはレンズの中にある穴ポコのことです。穴ポコは大きくしたり小さくしたり調整できるもので大きいとレンズの外の光がたくさんカメラ内に取り込まれ、小さくすると僅かになります。カメラ内に取り込む光の量、つまり露出を調整するのが主たる役割です。一方で露出を調整する仕事はシャッター速度でも可能です。目の前の景色の光をどれだけカメラ内に取り込むのか?は絞りとシャッター速度の両者で話し合って折り合いをつけるものなのですね。

ここまでは大丈夫でしょうか?

写真の明るさ、つまり露出を決めるのはカメラの測光機能(AE)が自動でもやってくれます。だから絞りがいくつでシャッター速度がいくつと撮影者が必ずしも決める必要はありません。テクノロジーの進化は実に有難いです。ただ全てお任せで貴方の個人的なART作品が生まれるでしょうか?答えはNOです。

多くのカメラでAまたはAVとある撮影モードにすることで絞りだけは撮影者が決める「絞り優先モード」を使いこなしてみましょう。F値で表される絞りを撮影者の意図でコントロールすることで表現の幅が一気に広がります。

EOS6D Mark2 + EF70-200mmF2.8L IS

よし、じゃあ絞り優先モードに挑戦してみよう!となったらまず1つだけ重要な知識をつけておきましょう。それは被写界深度といって少々専門的な単語ですが簡単に言ってしまえばピントの合う範囲という意味です。

絞りを調整することで被写界深度を変えることができます。F値は数値が小さいほどに穴ポコは大きくなり被写界深度は浅くなります。逆にF値の数値が大きくなるほど穴ポコは小さくなって被写界深度は深くなります。

被写界深度が浅ければ手前の物や背景はボヤけ、シャッター速度は早くなります。逆に絞り込んで被写界深度が深くなれば全体にピントが合うような写真となり、光の量が減った分、シャッター速度が遅くなることで補ってくれます。

…と、この辺までは多くの方が既にご存知の知識だと思います。では応用について解説してみましょう。




EOS6D Mark2

じゃ、ツーリング写真でどんな時にどんな絞りにするのだね??ここからが本題です。まず被写界深度を繊細にコントロールしたい場合。前景、バイク、その他の被写体、背景、遠景など奥行方向に複数のレイヤーが存在したとき、どんな風に魅せたいか?と意図を決めた後に絞りを調整します。上の写真では前景がいきなりバイクで背景がコンテナ船、遠景が富士山、その他の被写体が鳶という構成です。こういった構図ができたときに絞りを調整!です。

この作品の場合、魅せたい主役は東京湾にうかぶ冬の富士山(が当初の意図でしたが思わぬ珍客で主役は鳶がもっていきました)、でありバイクは脇役。そこへバイクでやってきたライダーが見ている風景なのだな、という事実が誰の目にも十分に伝わる程度にそれら脇役をボカして、主題をより魅力的に演出しているのです。

一方がボケることで重要な方が浮き立つ。これが絞りを開いたり、ボケ具合や深度の微調整で魅せる基本的な考え方です。

EOS6D Mark2 + EF35mmF2IS

この作品はテント越しにみた富士山の見えるキャンプサイトです。テント、バイク、ライダー、本栖湖、富士山と大まかに5レイヤーある構図ですが、この場合は近景であるテントや寝袋の様子を十分に伝えたいという意図があるので、絞り込んで近景からピントを合わせました。

絞りを開こうか?それとも絞り込んで調整しようか?

まずは構図として複数レイヤー存在していること、それからそれら近景や遠景をどう魅せたいか?を最初に決めるのですね。どう魅せたいか?そうイメージです。撮る前につくる空想の写真「イメージ写真」がここでも重要なわけですね。

EOS6D Mark2 + SIGMA12-24mmF4.5-5.6DG

もう1つ、重要な知識として被写界深度は望遠の画角ほど狭くなる傾向があります。正しくは望遠で近くの被写体を撮る場合ですね。逆に広角ほど被写界深度は深くなる傾向なので上の作品のような超ワイドレンズを使う場合はボケ具合で表現するのではなく、全体にピントが合った写真(パンフォーカスとも呼びます)で魅せます。

少々高度な話になってしまいますが深い被写界深度が発生するとき、そのピント位置のピークはどの部分にもってくるのか?という問題もあります。ここでは深く触れませんがそういった時にマニュアルフォーカスが活躍するものです。

広角レンズを使用するときや景色に複数レイヤー存在していないシーン、それは絞り値をいくつに設定しても出来あがる写真に大きな違いは出ません。ではそういった時は絞りはいくつに設定するの?という疑問があると思います。

EOS6D Mark2 + EF35mmF2IS

こんな時ですね。カメラの近くには被写体が何もなくて景色全体を撮る時です。こういったシーンで絞り値をF2.8にしようとF18にしようとシャッター速度が変わっていくだけで出来上がる写真に大きな変化はありません。

こんな時は古くから写真界で言われているセオリー通りで「風景写真はF11」の法則です。詳しくはF8からF11の間が良いと言われます。これはもうレンズという光学製品の特性によるものですが、レンズの前玉などは球面レンズになっていて外周付近はどうしても精度が落ちてしまい、中心付近が良好な特性なのです。F8からF11の間はその一番精度の良い中心をつらぬく絞り値となるので、解像度や収差などが最小限で美しく撮れる絞りである、と言えるのですね。

えっ?もっと絞るのはいけないのか?さらに絞り込むのは例えばレンズの数センチ前にある被写体から遠景までシャープにしたいとか、あるいはシャッター速度の観点でブレを表現したいときなどに、さらに絞るのですが極端な小絞りは回折現象(別名:小絞りボケ)という画質低下を招くので、特に逆光のときは注意が必要となります。




EOS6 mark2 + EF35mmF2 IS

もちろん風景写真はF8からF11が良いと言ってもそれは十分に明るい場所の話です。この作品のように星景写真や夜景写真など、絶対的に暗い場所では少しでも光を多く取り入れたいので迷わず絞りは解放を選びましょう。ただ最近のカメラはISO感度を高感度に設定してもノイズが低いので、これからはF8あたりで撮って露出は高感度で補うのが一般的になるかもしれませんね。星景写真は点光源の集合なので、きっと解放よりもF8あたりで撮った方が光学的な意味では綺麗に撮れるのだと思います。

 ~絞りをマスターして被写界深度を極めよう まとめ~

・絞りを変えることは前景や背景のなどのボケ具合の調整

・ボカすことは作品の意図や主題を浮き立たせて魅せる表現である

・ボケ具合、被写界深度の調整とは構図に複数レイヤーを作ったとき

・望遠レンズほどよくボケて広角レンズはあまりボケない

・風景写真をひいて撮るときはパンフォーカス

・近景や複数レイヤーないシーンではF8からF11の間が美しく撮れる絞り

と…今までと違った感じで解説してみましたが如何でしたか?知識とは持っているだけではほぼ無意味で、実際にそれを実践し失敗と成功を幾度か繰り返さないと「習得」とはならないものです。習得に結び付けることのできなかった知識は恐ろしいことにあっというまに忘れてしまうもの。ぜひ次の撮影で意識して実践してみてくださいね。

今回はこの辺で!!!

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