BMWのパラレバーサスペンションの仕組み☆R1200GSパラレバーの良さ

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究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、10月のベストシーズンを楽しまれていますか?ここ最近になって改めて感じたのですがR1200GSをはじめとするアドベンチャーバイクは以前にも増して人気カテゴリーのようですね。

国産バイクから乗り換える人、大型免許を取得してアドベンチャーバイクを狙っている人、驚いたのはハーレーから買い替えの人も少なくないようですね。それほどまでに現代のライダーを魅了するアドベンチャーバイク。きっと多くのライダーが従来のツアラーではなく高いスポーツ性を持った「道を選ばないスポーツツアラー」に魅力を感じているのかもしれませんね。

そんなアドベンチャーバイクブームの火つけ役であるBMW R1200GS。YouTubeやブログ、SNSなどで色々と調べておられる方も多いようです。当ブログのアクセス解析もR1200GSに関わるクエリが非常に多いです。R1200GSはボクサーツインエンジンなど独創的な機構が多いのでその仕組みやメーカーの思想などに興味を持つ方も多いようですね。

2008’ 中期型SOHCヘッド 空油冷R1200GS

そんなネット上の情報でちょっと気になる事を見かけました。それはパラレバーサスペンションの意味が分からない、パラレバーサスを納得できるまで詳細に解説している情報を見かけない…といったものでした。

確かにフロントのテレレバーサスペンションに比較してリアのパラレバーサスペンションは見ただけでは機構も目的もよく分からないですよね。簡単に言ってしまえばシャフトドライブ機構をサスアームに内包させたリンク式のリアサスペンションシステムです。

シャフトドライブ機構の話に登場するユニバーサルジョイントやらベベルギアやらクラウンベアリングやら・・・これらの単語は4輪の設計者には馴染みのものですがバイク専門の人にとってはチンプンカンプン(おじさん用語でしょうか?)なのも多くの人が理解できない要因だと思います。

 

そこで…R1200GSを12年乗っている一ユーザーとして、この問題を黙ってみているわけにもいきません。上手に説明できるか分かりませんが究極のツーリング写真流にBMWのパラレバーサスペンションについて解説を作ってみたいと思います!がんばります!

なおBMWではドライブシャフトのことを「カルダンシャフト」と言いますが以下の説明では便宜上「ドライブシャフト」と書いていきます。

BMWリアサスペンション機構 パラレバーサス

パラレバーサスペンションの各部の名称

ネットの情報やメーカーの説明ではBMWパラレバーサスペンションの説明は次のように書かれています。

シャフトドライブ機構特有のテールリフト現象を打ち消すためにファイナルケースにトルクロッドを取り付けフレームに接続させたもの。

・・・とあります。確かにこれだけの説明では仕組みも存在目的もよく分からないですね。多くのライダーはチェーン駆動のバイクしか乗ったことがない訳ですし、トルクロッドと言えばよくドラムブレーキのバイクに付いているアレですよね?テールリフトって何じゃい??果たしてどういう意味なのでしょうか??

シャフトドライブにはクセがある???

R1200GSのようなシャフトドライブ機構のバイクに限らず、全てのオートバイも車も駆動輪からはトルクリアクションという力が加減速時に車体側に発生します。このトルクリアクションは何らかの手段で解消しないとサスペンションの働きや乗り心地に影響するものです。

車の場合はデファレンシャルメンバーやサスペンションにトルクリアクションを吸収する機構を設けていますし、チェーン駆動のバイクの場合は後述に詳細を書きますがチェーン自体がトルクリアクションを解消する役割があります。

しかしオートバイの駆動システムをシャフトドライブにすると、別途トルクリアクションを解消するシステムを設けるかスイングアームを長くしない限りトルクリアクションが発生し、結果テールリフト現象が起こるのです。

昔のシャフト駆動である丸正ライラックのR92やBMWのOHV世代以前のモデルなどは後輪から発生するトルクリアクションの問題については未対応だった…と言うのが適切と言えそうです。もちろんドライブシャフト自体が回転することによるトルクリアクションも発生するので確かにクセはありますが、こちらはR1200GSの場合、エンジンのクランクシャフトと逆回転の関係なので打ち消し合って僅かとなります。

ドライブシャフトから発生するトルクリアクションと後輪から発生する加減速時のトルクリアクションは別なのですが、これが混同されてしまうのが「シャフトドライブはクセがある」と思われる原因かもしれません。

パラレバーサスペンションが対処するトルクリアクションはあくまで加減速時に後輪から発生する方のトルクリアクションです。

コトの根源を辿るとシャフトドライブ機構をサスペンションアームに内包することで発生する問題を如何にして解決しましょうか?という話なのです。もしドライブシャフトをサスペンションアーム内ではなく別の方角からアプローチしてあげれば、シャフトがトルクロッドの役割もしてくれるのでテールリフト現象に悩む必要などないのです。

むかし…確かロータスだったと思うのですがヨーロッパS1のプロト?でサスペンションアーム内にドライブシャフトを組み込んだシステムを試作したそうです。しかし実際にはシャフトの回転から発するトルクリアクションがサスペンションを動かなくさせてしまい失敗に終わったとか。

トルクリアクションとは?

回転するもの、とくに加速度的に回転するものを保持する部分は回転方向とは逆の方向へ力が作用するものです。ポリッシャーを使ったことのある人なら分かると思いますが回転方向とは逆の方へしっかり力を入れておかないとポリッシャーをホールドできないですよね。

ポリッシャーをしっかりホールドする場合、回転方向とは逆方向に力を入れる。




もう一つ例え話をすると車のボンネットを開けてエンジンをかけると、始動する瞬間はエンジン本体が大きく揺れますよね。あれは止まっていたクランクシャフトが回転を始める時に発生するトルクリアクションです。アクセルを空ぶかしすると回転上昇時と回転下降時で動く方向が逆になるのが確認できます。RX-7のようなロータリエンジンはかなり大きく揺れます。

BMWが説明している<テールリフト現象>が発生する仕組みはこのトルクリアクションに由来します。バイクは加速するときに後輪の回転エネルギーが加速度的に発生し、それに伴い後輪の回転とは逆転方向にトルクリアクションが発生します。

加速時に後輪の回転方向とは逆転方向にトルクリアクションが発生する。

このようにリアアクスルの中心を台風の目のようにして逆回転方向にトルクリアクションが発生します。学生の頃、物理の先生が「力は目には見えない」と言っていたのを思い出します。

逆回転方向のトルクリアクションは車体へ伝わりテールリフト現象となる

その力はサスアームを介して車体へ伝わり、それが車体の後部を持ち上げるスクワットモーメントに変化します。本来、加速中ならGを受け止めて縮んでほしいリアサスペンションですが逆に伸びます。これがテールリフト現象です。

減速の場合はこの逆になります。

なぜテールリフトしちゃダメなの?

なぜテールリフトがいけないのか?多くのネット情報ではこの部分の説明が抜けています。アクセルのオンオフでリアが跳ねるようで違和感だとか色々と書かれていますが、本当の理由はリアサスペンションの仕事を妨げるからです。

リアサスペンションの仕事とは…

1.加速Gを受けて沈み込みタイヤを潰してトラクションを生む

2.路面のギャップ等で跳ねないようタイヤに路面を追従させる

これらサスペンションの仕事「縮みたい!!」をテールリフトが邪魔してしまうのですね。

具体的な現象を説明すると加速中にテールリフトが発生しているとサスペンションが沈まずトラクションが抜けてタイヤが空転(R1200GSのASCが作動すれば空転はしませんが)。または加速中に路面のギャップを通過すれば跳ねてガツンという嫌なインパクトが車体に入力される…などが起こりえます。

パラレバーサスペンションの仕組み

平行四辺形というよりは台形に近いですが

後輪の回転方向とは逆回転に発生するトルクリアクション。これがアーム伝いに車体に入り後部を持ち上げるのがテールリフト。ならば逆回転モーメントをファイナルケース付近で食い止めてやろう!ということでファイナルケースにトルクロッドを取り付け、その行く先を車体側フレーム(バネ上)に接続し平行四辺形を描くようなリンクを作ったのがパラレバーの基本機構です。

torque とはねじれモーメント、物体を回転させる力、などを意味しますが車軸から発する回転モーメントを支える軸、という意味でトルクロッドですね。トラックのリーフスプリングサスなどにはマストで付いています。

パラレバーという名称はおそらくparallel(平行)レバーストラットの略称だと思うのですが構造的には平行四辺形の位置関係を保持して動くというところがポイントなのですね。




トルクロッドの役割

トルクリアクションは赤い部分で消費されオレンジの部分は僅かとなる。

トルクロッドをフレームに繋いでいる右上のポイントをAとしましょう。

リアアクスル付近を台風の目として発生する逆回転モーメントはトルクロッドがAポイント後方に引っ張るだけのエネルギーとして消費されるのです。加速中、トルクロッドは運動会の綱引きのような状態でファイナルケース側とAポイントで引き合う作用があり、ここでトルクモーメントの大半が消費されるという理屈だと思います。

四輪のダブルウィッシュボーンとは目的が違う

この平行四辺形のような機構をみて四輪車のサスペンション機構であるダブルウィッシュボーンを思い出す人も多いと思います。確かに動きだけを見れば酷似していますがダブルウィッシュボーンとパラレバーでは目的が違います。ダブルウィッシュボーンはサスストロークした際のキャンバー角などのアライメント変化を最小限にすること、サスペンション剛性を高めることが目的でアンチスクワット効果は多少はあるようですがメインの目的ではありません。

他のバイクのトルクロッドと何が違う?

ドラムブレーキのバイクに付いているトルクロッドは主たる目的はブレーキパネルが万一回転してしまわないよう支えることです。ディスクブレーキのオートバイでもトルクロッドを装着しているものはありますが、その大半はブレーキキャリパーとフレームを繋ぐもので、ブレーキ時に発生するトルクリアクションをサスアームになるべく伝えないようにしているものです。

BMWのパラレバーサスペンションは駆動力によって発生するトルクリアクションを抑えるものです。理屈は同じですが付いている目的が違っているのですね。

完全にテールリフトを消している訳ではない

ここ、重要なポイントです。実は4ポイントをリンクで繋いだパラレバー機構は平行四辺形を描いていると書きましたが、実際は2辺は平行ではないし長さも微妙に違っているので台形と呼んだ方が適切です。完全な平行四辺形を作ればテールリフトをゼロにできますがBMWは何故そうしなかったのでしょうか。これには恐らく2つの理由があります。

1つ目は加速時のテールリフト現象を完全に消すと、リアが沈み過ぎて昔のマッハ3みたいに前輪が浮いてしまうから。

2つ目は加速時のテールリフト現象は減速時は沈む方向に作用するのでブレーキ時の姿勢安定を狙ったものだと推察されます。

今から12年前、私がR1200GSを購入したばかりの出来事です。脇道から全く確認をせず曲がってきた車がいました。もう衝突は免れないと思いましたが出来る最大限のブレーキングをしたところR1200GSは全く姿勢を崩さず何事も無かったように減速し止まりました。その時、車体がリアごと水平に沈んでいくような動きで極めて安定していて感動したものでした。

ちょっと長くなってしまったので次回の投稿に続きます・・・

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