BMWパラレバーサスペンションの仕組み☆その2

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BMWのリアサスペンションシステム パラレバーサスペンションについて解説していましたが、長くなったので2回に分けて解説をします。今回はその続きです。

前回のパラレバーサスペンションの解説は こちら

ファイナルのジョイント部の動き

このファイナルケースとレバーアームの間にあるジョイント部分。ここは前述したようにトルクロッドとレバーアームの長さが異なるため、サスペンションが伸びた時にトルクロッドに引っ張られて縮む動きをします。ここがなぜこの動きなのか?トルクロッドに引っ張られたからと言ってしまえばそれまでですが、何か理由があってこの動きなのだと思います。

しかし調べてみましたが、これについて詳らかにした公式情報を見つけることはできませんでした。

1つ確かな事はこの部分はにドライブシャフトのユニバーサルジョイントがあるということです。

ユニバーサルジョイントとは回転シャフトを変角できる自在継手です。R1200GSのドライブシャフトにはトランスミッション側とリアファイナルドライブ側の2か所についています。

R1200GSのドライブシャフト。両端にユニバーサルジョイント。中央の段差は長さの変化を吸収するため伸縮する仕組みになっている。




仮にレバーアームとファイナルケース部分を一本のアームだと考えてみます。加速時に僅かに残してあげたテールリフトの動きに対して、この関節は縮むので一本のアームは下側に押し付けられるような「逆への字」に曲がります。

なぜファイナル部だけがこの動きなのか?ここは私の推測なので間違いである可能性がありますが…たぶんファイナル部分はサスペンションがストロークした際にホイールの中心が上図のように垂直に近い動きをしてほしいから?ではないでしょうか。

もしくはブレーキ時にこの部分が伸びることで車体の安定や減速の効果を高めているのかもしれません(ちょっと自信ないですが)。

YouTubeで見かけた元四輪メーカーでサスペンション設計をされていた方の見解ではユニバーサルジョイントの回転をなるべく等速に近づけて低ロスを狙った結果ではないか?あるいはレバーアームを長くしてしまうとレバー比の関係でサスのスプリングレートがハードになってしまうからでは?との事でした。この情報が一番信憑性が高いですね。

ややこしいですが一言で言ってしまえば「その位置にユニバーサルジョイントがあるから」でいいと思います。

チェーンのバイクはなんで平気?

チェーンの場合はチェーン自体がパラレバーサスで言うトルクロッドと同じ働きをしてくれるのでテールリフトなどのスクワットモーションはほぼありません。チェーンの先はフロントスプロケットでそれは車体側、つまりバネ上ですから理論上はトルクロッドをフレームに固定したことと同じ役割を担うことになります。

つまりシャフトドライブに悪癖があると言うよりチェーンドライブは偶発的にトルクリアクションの問題を解決していた…という事なのですね。




他のシャフトドライブのバイクはどうしてる?

シャフトドライブを採用しているバイクは少ないとは言えR1200GS以外にもあります。XT1200Zスーパーテネレ、V-MAX、VFR1200F、ゴールドウィング、モトグッツィもそうですね。シャフトドライブの悪癖については各社が何らかの工夫で軽減させているようですが、そもそも100ps以下のオートバイでのんびり走るのなら気になるものではないと言えます。実際、スーパーテネレに試乗した時は違和感と感じるほど変な動きはありませんでしたし、加速中にリアサスペンションも問題なく動いていたと思います。

カワサキ 1400GTRのテトラレバーサスペンション

これはカワサキ 1400GTRのテトラレバーサスペンションです。ファイナル部分が分離されてリンクで可動する構造など、考え方としてはBMWのパラレバーと同じのようです。もしかしたら特許料をBMWに支払っているかもしれませんね。

それとスイングアームが長ければそもそもスクワットモーメントは無いというのもあります。BMWの公式の説明にパラレバーサスペンションと同等の効果をスイングアームサスペンションで得るには1.4mの長さにする…とありました。BMWの新型車でR18という1802㏄のボクサーツインを搭載した凄いバイクが発売されましたが、あれは超ロングホイールベースなのでパラレバーにする必要はないようですね。ぱっと見、リアサスペンションはハーレーのソフテイルに似ているようですが。

R18の祖先といえるR1200C これくらいアームが長ければパラレバーはいらない

逆に考えるとR1200GSのように走行性能を重視したモデルではホイールベースやレバーアームの長さをやたら長くする訳にはいかないので、テールリフト問題はパラレバーサスペンションで解決しショートホイールベース化を実現した…という事なのだと思います。

なぜBMWはパラレバーにこだわっているか?

これはフロントのテレレバーと同じ理由になると思います。

フロントのテレレバーサスペンションはブレーキングによるノーズダイブを抑え車体を安定させること、フォークの中心にAアームが固定されることで高剛性になり伸縮がスムーズであること。すなわちブレーキング中にギャップを通過してもサスペンションは良く動く、これが最大のメリットですよね。

リアのパラレバーサスペンションも全く同じです。加速中にテールリフトの力に邪魔されることなく、リアサスペンションはリア荷重や路面追従に本来の力を発揮できる。同時に減速時はリアを少し沈めて車体の安定化を狙っているのですね。

とにかくBMWはサスペンションに良い仕事をしてもらい、車体の姿勢を安定させたいのですね。

リアホイールの着脱も容易でメンテナンス性は良好です

BMWの走りが良い理由はテレレバーサス、パラレバーサスの両者が連携的に機能してサスペンションが「路面追従性」という本来の役割に集中できるからなのですね。

路面にギャップや起伏があるのはストリートの話でニュル北コースなどを除いてサーキットは基本は平らな路面です。だからサーキットではその機構のメリットを発揮しにくいですが、BMWは元々はツーリングバイクの専門メーカーな訳ですから、ライダーが旅をする様々な路面状況を想定しているのですね。

サーキットでのパフォーマンスを追求しているメーカーとは思想が違うと言えます。

複雑な機構を作ってまでシャフトドライブにこだわる理由

BMWがシャフトドライブ機構にこだわる理由は高い耐久性とメンテナンスフリー(に近い)ことの2点だと思います。

小さな島国と違ってヨーロッパや欧米では10万、20万kmと走行距離を重ねて走るのが普通なのでしょうからね。

かく言う私の経験も北海道ツーリングなどのロングツーリングではシャフトドライブ機構は本当に有難く感じたものです。旅先でチェーンのメンテは煩わしいですし、切れた、外れたなんていうトラブルも珍しくはないですからね。

サーキットを走るコンペティションマシーンならチェーンドライブが有利ですがツーリングに使うバイクならシャフトがいいです。




ドライブシャフトのトルクリアクション

ここまでのクドい解説でBMWのパラレバーサスペンションは加減速で後輪から発生するトルクリアクションを軽減するためのもの…とご理解いただけたと思います。次に混同されやすいシャフトからのトルクリアクションについて付言しておきます。

BMWのバイクを古くから知る人は右コーナーと左コーナーで特性が違う、アクセルを開けると右に傾き閉じると左に傾く…そんなお話をする方がおられます。R1200GSも空ぶかしすれば車体が左右に揺れますが右コーナー、左コーナーで違いが出ることはありません。これはOHV世代の古いBMWの話でシャフトドライブ機構から発するトルクリアクションの影響です。

現代のBMWはクランクシャフトの回転とドライブシャフトの回転は逆になってトルクリアクションを相殺しているので、このような現象は体感できない程度に僅かです。もしクランクシャフトもドライブシャフトも同一方向に回転していたらリアファイナルを支持する部分からシャフト回転のトルクリアクションが発生し、レバーアームが捩じられて支持部が渋くなりサスペンションがスムースに可動しないと思います。

ただし私のR1200GSのように空冷モデルは乾式単盤クラッチの大きなクラッチカバーとフライホイールが回転することで発生するトルクリアクションは大きいので、このクラッチ機構によるトルクリアクションは確かに発生するのが体感できます。

一方、ヘッドが水冷化された現在のR1200GS、R1250GSは通常のバイクと同様の湿式多版クラッチなので小型化され、なおかつクラッチが既にクランクシャフトとギアを介して逆回転しているのでトルクリアクションによる揺れ、ジャイロ効果は無いようです。モデルチェンジを経て良く言えばクセが無くなった、悪く言えばジャイロ効果を失った…何れにしても個性を失ったのは確かですね。

…これらの話は全てシャフト機構やクラッチ機構から出るトルクリアクションの話なので今回のパラレバー機構の話とは関係ないです。

まとめ

・通常、シャフトドライブはチェーンドライブのように後輪から発するトルクリアクション打ち消すことができない。

・パラレバーサスペンションはトルクリアクションから発生する「テールリフト」を軽減させる

・テールリフトを軽減したい真の理由はリアサスペンションに良く動いてほしいから

・ピッチングモーションを調整する目的で完全にはテールリフトを消してはいない

・フロントのテレレバーとの連携で加減速時の車体安定をはかっている

いかがでしたか…??

BMWの独創的なサスペンション機構について今回のように改めて考察すると、本当によく出来たものだなと異国のエンジニアに尊敬の念を禁じえないですね。車やバイクなどの工業製品は技術や研究が成熟の域に達してくると、異なるメーカーであっても似たような製品が出来上がる傾向があります。日本のバイク4メーカーで例えるとスーパースポーツ系がその最たるです。車メーカーもSUVやコンパクトカーなどマーケットに合わせた開発をすると似たような車ばかりになります。BMWが作る独創的な機構の数々はそんな工業製品界へのある種のアンチテーゼでもあるかのようですね。

しかしテレレバーやパラレバーサスペンションは利点ばかりとは言えません。前述した通りサーキットを走る分にはバネ下が重いことやスプロケットの歯数でギア比の微調ができない…などのデメもある訳です。何よりライディングテクニックを学びたい人にとってピッチングモーションの少なさは全く練習になりません。

教習車にしたいほど乗りやすいR1200GSですが、実際に大型バイクビギナーがいきなりR1200GSに乗って峠で調子よくトバすと転倒します。破綻する前兆がインフォメーションとしてライダーに伝わってこないからです。安定性の高いものが破綻する瞬間は恐ろしいものです。この辺をよく考えてBMWは確かに速いけどコーナーを攻めない!ことが大事です。大人のバイクなのですからね。

EOS6D Mark2 + SIGMA12-24mmF4.5-5.6DG

私の説明…どうでしたかね。多くの方が難しい、理解できない、としている事を分かりやすく説明する能力。最近私がトレーニングしていることなので、今回のパラレバーサスペンションの説明は絶好のネタでした。

しかし果たして分かりやすい説明だったかどうかは私自身には分かりませんけどね。いつものように長文になっちゃったし…

分かったような分からんような…という方、ぜひいちどR1200GSに乗ってみてください。乗れば絶対分かります!BMWがオートバイ業界に新たななカテゴリー「アドベンチャーバイク」を打ち立てたR1200GSという金字塔。個人的にはアドベンチャーバイクと呼ぶよりオフロード版グランツーリズモを意味する単語が良いのにな…と思います。グランツーリズモをドイツではグランツーリズムヴァーゲン(Grand-Tourisme-Wagen)と言うらしいです。オールロードGT…なんてどうでしょう?ダサいか。

BMW R1200GS パラレバーサスペンションの仕組みでした!!!

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