誰も教えてくれない絞りの使い方

究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、ツーリングに行かれていますか?私は今年に入ってからまだ1度も県外へツーリングに行けておりません。来月は志賀高原か裏磐梯あたりの涼しい所へキャンプツーリングに行きたいと思っております。

さて今回はカメラの絞りを調整することについてビギナー向けの解説を書いてみたいと思います。絞りと言えばレンズ内部にある穴ポコの大きさを変え、カメラ内に取り込む光量を調整できることですよね。表現手段としての効果はボケ具合、逆に言うとピントの合う範囲が調整できることです。これらはカメラの説明書にも書いてあるのでビギナーの皆さまもご存じですよね。

絞り込むとF値という数値は大きくなり穴ポコは小さくなる。するとピントの合う範囲は奥行方向に深くなりトレードオフとして取り入れる光量が減るのでシャッター速度が遅くなります。絞りを開くとその逆で背景や前景がボケやすくなるのですね。

しかし実際の撮影シーンで絞りをどのように使って良いか分からない人、何となく分かっているけど完全に理解しないまま写真を撮り続けている人は多いと思います。今回はツーリング写真において絞りを実践で応用できるよう作例を元に解説してみます。

 

EOS6D mark2 + SIGMA150-600mmF5-6.3DG C

毎度同じような事を書いてしまいますが「作品の主題はこれです」という事を最初に決めましょう。その上で「こんな風にみせたい」という空想の写真を脳内に描きます。これがないと絞りに限らずピント位置も構図もフレーミングも…何も決められないのです。

この作例は北海道のとある国道で撮ったものです。連続する矢羽(積雪時に路肩部分を指し示す雪国特有のもの)がどこまでも続く道ですが超望遠レンズで圧縮して間隔を詰めています。絞りはこのレンズの解放であるF6.3で撮っているのですがピント位置はR1200GSではなく道の先に合わせました。

ピント位置、ボケ具合、被写界深度(ピントの合う範囲)は主題へのアプローチとして機能させましょう。それと同時に主題を浮き立たせるよう演出に使うのが被写界深度のコントロールなのだ、とひとまず覚えてしまいましょう。

この作例の場合は道の先へ意味を持たせました。この撮影シーンでは車の途切れたオールクリアーの写真も撮りましたが、それではありきたりなので敢えて一般車が複数台入るカットを採用しています。その事で道の先には町や集落など人の営みがある地が待っているのだな…という事を見る側へ想像を誘います。「この道の先にはきっと…」が重要なのでピント位置は道の先、それを浮き立たせるため絞り開放で手前の方はボカしたのです。




EOS6D mark2 + SIGMA150-600mmF5-6.3DG C

うったえたい一つのモノ、コトを明快かつ魅力的に伝えるにはどうしたら良いか?見る側へそれを誘導してあげる何らかの手段が要求されるのですが、それが構図であったり今回ご紹介する絞りのコントロール(被写界深度のコントロール)といった手法なのですね。

この作例の場合は岩に砕ける波の様子が主題ですが、画角と撮影スペース(これ以上後ろに下がれない)の関係でR1200GSがけっこう大きく構図されてしまいました。この構図で絞ってしまうとバイクの存在感が強まって波の印象が際立ちません。

この撮影シーンも何枚もシャッターを切ったのですが、このカットだけは飛沫の様子が翼を広げたドラゴンのようでユニークだなと感じたので採用カットにしました。この作品の主題は岩に砕ける波の様子です。それが最も分かりやすく魅力的に見えるように絞りを選択しています。

遠景に船、岩に砕ける波、R1200GSで大まかに3レイヤーで構成された構図ですが意味を持たせたいのは「岩に砕ける波」なので合焦点は1ポイントでOKです。1ポイントの場合は簡単ですがもし別の意図を作ったとして波の様子とR1200GSの2ポイントにピントを合わせたい場合、両者の距離と選択しているレンズの焦点距離から絞りを決定させます。例えば波とR1200GSの間が15mくらいとしてレンズは200mmを選んでいたとします。その場合最低ほしい被写界深度を計算すると絞りはF11になります。そして重要なのはマニュアルフォーカスに設定してピーク位置を波とR1200GSの中間に置くことです。もっとも更に絞ればピーク位置は気にしなくても2ポイントにピントが合いますが、それでは砕ける飛沫を瞬間として止めるシャッター速度が得られませんし、遠景の船にまで合焦してしまいイメージ通りの写真になりません。




これは主題を浮き立たせるように見せているだけでなく、ボケそのものを演出に使っている例です。前景になっている枯草に夕陽の逆光が当たりキラキラとハイライトが入りました。絞りを開いてこのキラキラをボカすと一般に言われる玉ボケ、レモンボケという効果が得られます。

一眼レフをはじめて買った時、みんなやるヤツなので「これは知っている」という方も多いのではないでしょうか?ここでも先ほどと同様に玉ボケ自体がどうこうではなく、作品の主題(この場合は夕陽に輝くキャンプ地)を魅力的にするための演出手段であることを忘れずに使いましょう。「黄金のキラキラに包まれたキャンプ地」といった具合に表現を言語化しても良いと思います。

玉ボケは人物の背景に使うと効果的ですがツーリング写真の場合はバイクの各パーツに入ったハイライトをボカすと面白い演出になります。




はじめて一眼レフを買って最初に写真を撮るときに、ビギナーの方が途方に暮れてしまう絞り。奥行方向に並べた鉛筆などを作例に絞りを変えると深度が変化する様子はネットやハウツー本によく載っているので知識としては理解できた。しかし実際の撮影で応用できない。結局、Pモードのままいつも撮っている、あるいは適当に絞りを設定している…なんて方も多かったのではないでしょうか?

知識は自分の撮る写真に応用するときに思考しないといけません。思考ばかりは他者を頼ることなく自分でしか出来ない事です。今回ご紹介した3つの例はほんの一部にすぎず、その他にも絞り、深度をコントロールすることで様々な見せ方があると思います。大切なのは最初に「撮りたい写真のイメージ」を想像することです。そのイメージは言ってみれば完成予想図であり、それを実現させる手段として相応しいのは絞りなのか露出なのか構図なのか?を探ってみましょう。

想像と思考をなくして良い写真は実現しません。

今回はこの辺で!!

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