永久保存版☆ツーリング写真家が作品を生み出す7つのプロセス<前編>

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究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、皆さまはSNSなどのコミュニティーでいい写真を撮る人、この人が撮る写真が好きだ、という方に「お会いしてみたいな」と思ったことはありませんか?

以前に写真はセンスよりも人柄で撮りましょう…という記事を書いたことがあります。写真に限った話ではありませんが多くの芸術はその作品に惹かれるだけに留まらず作者はどんな人なのだろう?と思いを抱くものですよね。ラジオでかかった曲が「この曲いいな!好きだなこうゆうの」と思えばどんな歌手か気になりますよね?

私もよくFacebookやInstagramで私が大好きな感じの写真を撮る人に「いちどお会いしてみたいものだな」と思う時があります。写真って自分という人間の発表であり、見る人へのメッセージやプレゼントのようなものだな…なんて最近考えます。写真を見る側として「こんな素敵な写真を見せてくれて元気や勇気をもらったな」と作者へ感謝の気持ちを抱くのはごく自然なことだと思います。

そして私のような者でもたまにSNS等で「いちどお会いしたいです」「どこかでご一緒に走りましょう」と言っていただけるのですが、それが本当に嬉しいです。これからもそんな風に言って頂けるような写真活動をしていきたいですね。




EOS6D Mark2 + EF70-200mmF2.8L IS

さて今回はツーリング写真解説に関わる総合的なお話としてバイク写真、ツーリング写真の「作品」が誕生するまでのプロセスを7つの項目でご紹介してみたいと思います。当ブログをこの投稿で初めて訪れた方が驚かれないよう最初に書いておきますが、バイクでツーリングに行ったついでにせっかくだから記念写真を…という方向けの内容ではありません。ツーリングと写真が融合した写真芸術の魅力に憑りつかれ、ツーリングに行く時は必ずカメラを持って出かける熱いpassionを持ったツーリング写真家(またはそれを目指す人、憧れている人)向けの内容でございます。

1.Factor(理由)の解明

Factorの解明とはツーリング写真のクリエイティブタイムで最も初期段階で行う謎解きのプロセスです。風光明媚な海岸線でも、美しい光が差し込む林道でも、素朴な漁村でも、貴方がバイクを走らせて日常の雑念から解放されている時、旅人として写真家としてのセンサーが何かに反応を示します。「おっ、この辺に何かあるな」「あの小径の先が私を呼んでいるわ」といった具合に、センサーに従順になり少しの勇気と冒険心があれば撮影地を発見するはずです。

しかし!ここだ、と思ってバイクを停めてもすぐには撮り始めることは出来ません。まずはFactor(理由)を探しましょう。写真を撮りたいと思った理由とは多くの場合で最初は見えにくく具体性がないものです。

キーを左に回し愛機のエンジンを停止させれば辺り一帯は静寂に包まれます。まずはここでなぜここで写真を撮ろうと思ったのか?なぜここが良いと思ったのか?をしっかりと説明できるよう明らかにしておきましょう。これをやらないと次のプロセスで具体的な作業に落とし込めないのです。

まず最初に言葉で説明できるのは「ここイイ感じだから」です。ここが謎解きのスタート地点。そして目の前に景色や被写体をよく見て走りぬいてきたライダーの鼓動を落ち着かせる意味で深呼吸でもしてみましょう。見るだけでなく空気の香り、草が風でゆらぐ音、肌に感じる空気など五感をフル動員します。

心が落ち着いて静寂した空間に馴染んでくると、当初は見えなかったものが見えてきます。湖がいいと思ったんだけど実は空を写し込んだ湖がキレイだったんだな、緑の木々がいいと思ったんだけど一番の魅力は差し込む光だったんだな、桜が満開で心が高揚していたが実は幹が堂々としていたんだな、といった具合です。

上の作品では遠景に見える十勝岳連峰を撮ろうと当初は思ったのですが、Factorの解明の結果、大空の空間に何か惹かれて自分はここでR1200GSを停めたのだと確信しました。

このように1つのFactorを決めたら小さな声で言葉にしてみましょう。




2.Real side分析

Real Side分析に欠かせない重要アイテムは写真家眼です。写真家眼は被写体の特徴や細かな部分まで逃さず分析する感性の眼です。そして目の前の空間がいまどのようになっているのか?工事現場で言う測量のような仕事もします。写真家眼は豊富な経験によって養われていくもので決して視力のことではありません。

被写体の大きさ、位置関係、遠景と近景の確認、色や図形といったデザイン要素を見つける、そして重要なのが光と影の様子を把握することです。

7つのステップの中で最も退屈な作業と言えるかもしれませんが、これをしっかりやらないと基礎工事の無い建物を作ってしまうのです。それに写真を撮る上で重要なある決め事を決定付けることができません。それは焦点距離の選択です。

EOS6D Mark2 + SIGMA150-600mmF5-6.3DG

この作例では遠景となる利尻富士とR1200GSのある場所までの距離を考慮しその結果として望遠レンズを選択しました。近景として赤い船を置いたこと、デザイン要素として船体の赤とロープの黄色を意識したこと、そして利尻富士の峰が雲に覆われる直前のタイミングである事に気が付いたことです。

出来あがった写真を見れば誰でも分かることですが、いざ撮影地で目の前の光景からこれらの特徴や空間構造を洗い出すのは簡単なことではありません。写真家眼、審美眼を鍛え上げた人だから見えること、確認できることなのですね。

Real side分析は街中のスナップ写真のようにアッと思った瞬間にパッと撮る写真や、ドキュメンタリータッチな表現では必ずしも重要ではありません。しかしビギナーの方は時間をかけて習得しておきたいのが写真家眼、または審美眼です。

Real(現実の様子)Side分析は写真の測量と材料収集と覚えてくださいね。

3.Heart sideを感じ取る

Heart sideを感じ取るのに欠かせないのは写真家の豊かな感受性、感性です。よく見かけるような普通の夕陽でもジーンと感動してしまう繊細なheart、雑草のお花に「わあ、可愛いお花!」と無邪気に喜んでしまう人、そうゆう人でないと撮れない写真があるものです。

宗谷丘陵 白い貝殻の道

感受性は誰でも幼いころは豊かだったはずですが、時と共に世の中の雑踏ですり減って輝きを失うのでしょうか?感度を落とさないと傷つくことばかりだから自己防御で鈍感にしてしまったのでしょうか?それはそれで仕方のない事かもしれませんが、少なくとも写真を撮るときは幼い子供のように小さな事でも声に出して、表情にして感動するよう、自分の心に働きかけてみましょう。

恥ずかしいですか?お気持ちは分かりますが残念ながら恥ずかしくて無理!という事ですと憧れの一枚は永久に叶わないと思います。




逆にこう考えてもいいと思います。写真をライフワークとして生きていくことで失いかけた感受性を取り戻してみましょう。写真にはそんな素敵な力があると思います。もしどうしても難しいようでしたらロマンチストという事でもいいと思います。

この作品では宗谷丘陵の白い貝殻の道に夕陽が当たってキラキラと輝いていました。あまりの美しさに心打たれ危うく心の何かが崩壊しそうでしたが、感動が大きすぎる場合はある程度はコントロールしないといけません。感情が押しつぶされてしまえば冷静にカメラも操作できないですからね。これは写真家の悲しい運命です。

そしてオススメの手法は感動したことを小説や詩に出てくるような日常ではあまり使わない言葉で形容してみましょう。上の作品では「夕陽の光が貝殻の道に宝石を散りばめていた」といった具合です。そしてこれを次のステップで作品に埋め込むのです。宝石を散りばめたように写すにはどうしたら良いのか?と。

1枚の写真の中に作者の感動したことをメッセージとして埋め込むこのプロセスは今回ご紹介する7つのプロセスの中で最重要であると断言できます。けっこう見かけるのが構図やら露出やら撮り方は上手なのですが作者の感動が入っていない空っぽの写真です。

そういった写真にならないよう感受性、感性を意識して何にでも純粋に感動できる心を育みましょう。

ちょっと長くなってしまったので続きはまた明日の投稿で!!!

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