ズームレンズ完全マスター☆焦点距離の感覚とイメージ力

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究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、今回は久しぶりに<中級>ツーリング写真解説としてズームレンズの使い方と焦点距離、焦点距離のイメージ力について書いてみたいと思います。

といっても焦点距離とは何ぞや、といった固いことは抜きにしてズームレンズが上手に使えるようになるよう、焦点距離の感覚を養えるシンプルな解説を目指してみたいと思います。

まず<中級>ツーリング写真解説とはいえ、最初に簡単に焦点距離やズームレンズについておさらいをしてみたいと思います。焦点距離とはレンズの中心から結像点までの距離が何mmであるかを数値で表したものです。数値が変化することで風景がワイドになったり遠くの物を大きく写したりと倍率が変わります。1つのレンズで焦点距離を調整できるレンズをズームレンズといい、調整できず固定されているのが単焦点レンズです。

※この先の焦点距離の解説では35mm換算(フルサイズ)を前提に書いていきます。センサーサイズAPS-Cのカメラではおよそ1.5倍で考えて頂ければ結構です。例:35mm→52.5mm

人の目はおよそ50mmなので一般的に50mm付近を標準レンズとよび、それより数値の小さい24mmとか35mmというのはワイドに写せる広角レンズ、逆に数値の大きい135mmとか200mmが望遠ということです。

☆ここでワンポイント☆人の目はおよそ50mmで固定なので、例えば目の前の風景を85mmで撮ったらどんな風に写るだろう、28mmで撮ったらどんな風に写るだろう、とすぐにイメージがわかないものです。もし人間の目にもズーム機能があったら…たとえ写真のビギナーでも焦点距離の感覚は完璧に備わっているのだと想像できます。

リコー GR APS-C (焦点距離 28mm)

もちろん焦点距離の感覚などなくても、実際に1枚撮ってみれば分かる話なのですが、事前にイメージを作れることで作品の意図を表現するのに最適な焦点距離の選択ができるのです。

経験豊かな写真家は「こんなシーンは広角レンズで広がり感を出して魅せよう」とか「望遠の圧縮効果を利用して主題を少し押し出してみよう」といった具合に「こんな時はこうしよう」という撮影の引き出しを幾つも持っているのもです。

それぞれの焦点距離での特徴をよく理解し「こんな風に魅せたい」といったcaseに合わせて最適に、または裏技的に選択できれば上級者の領域と言えるかもしれません。【こんな風に魅せたい】とイメージして選択することは焦点距離に限らず露出、深度、デザインやフレーミングなどにも同様に言えると思います。




…さて本題ですが焦点距離を調整できるズーム機能は、もはや現代のカメラでは一般的な機能であり、むしろ焦点距離が固定されている単焦点は何か特別な理由があって拘って撮る人のマニアックなアイテムのようなイメージですよね。

よく聞くのは次のようなことです。・ズームレンズは便利だよ ・やはり単焦点は描写がよい この2つ、よく耳にしますね。もちろん間違いではないです。私もこれについてはある意味で同感です。

しかしツーリングでズームレンズを持っていくか、単焦点レンズを持っていくかはご自身のツーリングスタイル、ご自身が撮りたいと憧れる写真により選択することで、他人からの情報に左右されてはいけません。

EOS6D Mark2 + 望遠ズームレンズEF70-200mmF2.8LIS

ただ1つ、はっきりと言えるのは我々バイク乗りは持っていける荷物のボリュームが極めて限られており、何本ものレンズを持って行くよりはズームレンズなら1本(または2本といった少ない本数)で出かけられるので、やはりズームレンズは便利であるということです。

ズームレンズよりも単焦点レンズの方が描写がいいとか、ボケ具合が美しいとか言われるけど、そこは装備を軽量にすることを優先して妥協しちゃうのか???という疑問も聞こえてきそうです。これについては【どんな写真が撮りたいか】を事前にはっきりと決めておくことが大切です。その撮りたいイメージが単焦点レンズでないと実現できない、という事であればぜひ単焦点レンズを選択するべきです。

次にズームレンズが便利であることの意味を多くの方が勘違いしているので、それについて触れてみたいと思います。

ファインダーを見ながらズームリングを回して大きさを調整しただけの作例

ズームレンズが便利であること…それはファインダー(またはモニター)を見ながら被写体の方にレンズをむけズームリングをぐるぐると回し、大きさや範囲を調整してパチリ!これがズームレンズが便利と言われる理由…ではありません!!!大変な誤解です。

ファインダーをみながらズームリングぐるぐるは足が全く動かないまま、アングルの模索や被写体に寄るという基本までもが奪われてしまいます。上の失敗例はその典型的な写真です。

では正しい…というか当ブログが推奨しているズームレンズの使い方を解説してみたいと思います。上の写真はキャノンのズームレンズEF24-105㎜F3.5-5.6IS STMというEOS6D Mark2のズームキットに付属していたレンズです。このレンズは高級レンズであるEF24-105㎜F4Lの廉価版のようなズームレンズですが、EF24-105㎜F4Lよりも軽量であることを考えるとツーリング写真向きと言えるフルサイズ一眼レフ用ズームレンズですね。

さてこのレンズの場合、24㎜から105㎜を守備範囲としている訳ですが、この範囲内でいくつかのポイントを作り、そのポイントに縛って使ってみましょう。参考になる焦点距離のポイントは一般的に単焦点レンズとして売られている焦点距離の数値を参考にしてみます。つまり24、35、50、70、85、105とレンズにも書いてありますが、この6ポイントに縛って撮るのです。

この6ポイントを撮る直前のイメージの時点で選択するのです。6本の単焦点レンズを持っていると考えても良いと思います。

EOS6D Mark2 + 望遠ズームレンズEF70-200mmF2.8L 焦点距離200mm

海岸に続く砂の小径と波が打ち寄せる海の様子、これを愛車R1200GSと関連付ける構図を作りたい。海岸のツーリングシーンを1枚に。しかし実際のところR1200GSの位置から海までは距離がある…よし!ここは200mmで海を引っ張って砂の小径を短く圧縮しよう。 →このレンズのテレ端である焦点距離200mmを選択。

 

EOS1Dx + EF24-70mmF2.8L 焦点距離24mm

手前に咲くハマヒルガオなどの野生花に寄り、爽やかな空の解放感、キャンプサイトを日の丸に構図して写真を見る人を誘うような表現にしたい。→手前の花からの遠近感、空や野営地の解放感を表現したい →このレンズのワイド端である24㎜を選択。

この2つの例のように被写体や情景からの感動を受けて、その魅力を見出したうえで魅せたいイメージを構築し、そのイメージがどのような焦点距離なのかの決めるイメージ力です。よし!ここは〇〇だから被写体に寄って35mmでいこう、この被写体の存在感を絶対的にしたいから85mmで引っ張ろう、といった具合に表現したいことに対して焦点距離を選択するのです。




まずはイメージを作ってズームレンズのポイント縛りの中から選択をすること。つまりファインダーをのぞく前に、焦点距離は先に決めるのです。ズームレンズの縛ったポイントの中からです。

EOS6D Mark2 + SIGMA50mmF1.4ART 見る人がその場にいるような臨場感の50mm

撮る前に焦点距離を選択できるようになるには2つの要素があります。目の前に広がる空間がその焦点距離でどのような写真になるのかイメージできる感覚が1つ、2つ目はそろれぞれの焦点距離の特徴を理解することです。広角は写真の世界に誘い込むような雰囲気、標準は実際にその場にいるような臨場感、望遠は圧縮された勢いが写真から突き出てくるような迫力があります。

それと撮影者による好み、得意の焦点距離というのがあるのも知っておきましょう。私の場合は14㎜、28㎜、35㎜と言った広角が好きで、望遠は極端な望遠は好きですが中望遠や標準は勉強中であります。

EOS5D Mark2 + EF14mmF2.8L  私の大好きな超広角 14mm

撮る前のイメージで焦点距離を完璧に選択するのは、焦点距離の感覚を養った上級者の写真家脳です。そういった完成された脳を養う方法はゴルフやピアノと同じでとにかく練習して経験を積んでいくしかありません。しかし1つだけオススメの手法があります。それは自分が過去に撮ったお気に入りの写真が何ミリであったのかを覚えておくことです。

ある程度の経験を積んだ方であれば、誰しも過去に撮ったお気に入りの作品があると思います。そういったお気に入りの1枚は、その写真を撮ったとき実際の情景がどんなだったかも鮮明に記憶しているものです。であれば、そのお気に入りの1枚が例えば28mmであれば「このシーンはあの時の写真に似ている…あの時の感じで撮るなら28mmなんだな」と決められるのです。

少し脱線しましたがズームレンズの使い方に軌道修正します。お使いのズームレンズの数字が書いてあるポイントに縛る撮り方、ポイント縛り。ファインダーをのぞく前に焦点距離を決めよう、という話はご理解いただけたと思います。




次にズームレンズのもう1つの便利な使い方<画角の微調整>です。ズームレンズはせっかくの調整機能です。焦点距離の感覚が身に付いてイメージに対する選択ができるようになったら、いつまでもポイント縛りを守る必要はありません。困った時はズームリングを回して微調整をしてみましょう。

困ったとき…それはスペースを奪われて動けなくなった時です。後ろは壁でこれ以上は下がれない、写真のようにこれ以上近づいたら海に落ちる、尖った岩のてっぺんによじ登って撮っているので全く動けない。そんなときに画角が完璧ではないと感じたら、画面の四隅を慎重にチェックしながらズームリングを回して微調整しましょう。このシチュエーションに出くわすと、ズームレンズって本当に便利だなと実感するものです。

  ~ズームレンズ完璧マスター まとめ~

・ファインダーをのぞきながらズームリングぐるぐるは止めよう

・ズームレンズの調整範囲内でポイントをいくつか作って縛ってみよう

・焦点距離の選択は撮る前のイメージで決めよう

・スペースを奪われたら微調整してみよう

いかがでしたか?やれ単焦点は描写がいいとか、やれズームレンズは便利だとか情報はネット上などで溢れていますが、焦点距離や画角というのは感覚と好みの世界なので、他者の情報は役に立たたないものです。とにかく失敗から成功まで色んな写真をたくさん撮って、経験を積み、好みを知り、そういった楽しみの中から感覚を身に着けてくださいね。

今回はこの辺で!!

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