究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、当ブログではバイク写真、ツーリング写真に関わるあらゆることを、ビギナーの方やこれからバイク写真をやってみよう!と思い始めた方々を対象に解説しております。
しかし「マニアックすぎてよく分からん」というお声もチラホラあるようですので、今回は初心に帰って「小学生でも分かる露出」と題して優しい内容でいってみたいと思います。

露出と聞くと何やらカメラの専門用語っぽくて難しく感じるかもしれません。しかし意味としては真夜中にコート1枚を着ている怪しいオジサンと同じで、閉ざされいたモノを明るみに露出させることです。
カメラの内部は真っ暗な箱になっていてシャッターを切った瞬間だけレンズを通してカメラを向けた先の様子を光として取り入れます。
その外の光をあびたイメージセンサー(またはフィルム)は瞬間の画像としてメディアに記録します。これが写真です。当たり前のことですけどね。
カメラ内に外の光をどれくらい露出させるか?つまり光をどれだけ取り入れるか?が露出の基本的な考え方です。
方法は主に2つあって1つはシャッターが開いていた時間。2つめは絞りといってレンズ内にある穴ポコの大きさです。シャッターは長く開いていれば光はたくさん。短ければ少しだけ。絞りの穴ポコは大きければ光がたくさん…小さければ少しだけ。
いま目の前のシャッターを切ろうとしているその風景。そこにある光が仮に100だとします。目で見た通りの明るさの写真が欲しければ露出は100欲しい…。そんなとき例えばシャッター速度君が40の光を取り入れるから、絞りチャンは60取り入れましょう。お互いに持ちつ持たれつという事なのです。
ここでポイントを1つ。シャッター速度と絞りはそれぞれに違った役割があります。シャッター速度は写真に時間を与える役割、絞りはピント範囲(逆に言うとボケ具合)で印象を調整する役割があります。

絞りチャン:お~い、シャッター速度君。ちょっと頼みがあるんだが!ここは手前の桜から遠くまで全部にピントを合わせたいから絞り込みたいんだよね。したがって20くらいしか光が仕入れられん。何とかなるかい?
シャッター速度君:おぉ~絞りチャン、いつもお世話になっているから今回は何とか俺が頑張るよ。では80の光をオイラが仕入れよう。少し遅くなっちゃって電車がブレるけど、電車の存在感を控え目にできるし、動きも加わってアリでしょ。

シャッター速度君:おーい、絞りチャン。今回はめっちゃスピード感を出したいのよね。でもスピード違反をする訳にもいかないし、長~~~く開けたい訳よ。でもそうすると光が90くらい入っちゃう、分かるでしょ?
絞りチャン:水臭いな~シャッター君。2人は生まれた時からずっと1つのカメラにいる大の仲良しではないか。よしここは持てる筋力をフルに絞って超絶ちっちゃい穴ポコにするぜ。そうすれば光は10にできるぜ~
・・・とこのように写真を撮るイメージに合わせて〇〇だから絞りをF11にした、とか〇〇のように表現したいからシャッター速度を1/10にした、といった具合に絞りかシャッター速度のどちらか一方を撮影者の意図で選択するとします。するともう一方はそれに合わせて適切な明るさにするため光の量をフォローしてくれるのですね。
しかし次のような場合はどうでしょう…?

絞りチャン:おーい、シャッター速度君。今回も手前のR1200GSから遠景の電車までバッチリとピントを合わせたいんだよ。また絞り込みたいんだ。40くらいになっちゃうけどあと60頼める?
シャッター速度君:ちょ…ちょっと待って。今回は俺だって主張させてくれ。ここで俺が光をいっぱい取り入れると電車がブレちゃうんだ。今回の構図では桜の時と違って電車はピタっと止めたいんだよね。ここは譲れないよ。せいぜい40くらいしか光は入らない。
絞りチャン:えぇ~マジっすか?40+40で80。あと20足りない…どうしようか?
シャッター速度君:「こんな時はあのお方に頼むか…ISO感度先輩へ」
絞りチャン:「えぇ~マジ。あの怖いISO感度先輩!いつも昼間寝てるじゃん、いま頼んで怒られんじゃね?」
シャッター速度君:「確かに怖い。何年か前にオーナーが三脚忘れた時。ISO5000とかで撮った写真見た??もう荒れ荒れ!!」
絞り君:この間なんか「あ~天の川撮りてぇ~」とか言って指をポキポキやっていたよ。
こえ~~~
しかしここでは明るいシーンとはいえシャッター速度、絞りの両者に撮影者の意図が存在しています。そんなときは届かない分の露出をISO感度で補う引き出しを備えておきましょう。ISO感度を上げるのは夜や暗い屋内と決めつけないように~。
ISO感度は絞りとシャッター速度の両者では不足している光量分を「感度」という名の通りセンサー(またはフィルム)を敏感にして補うものです。しかし無暗に感度を上げてしまうとノイズが発生してしまい荒れた画像になってしまうため、原則としてISO100を常用します。
絞り込んだらシャッター速度が低下した、しかしカメラを手持ちで撮るので手ブレが心配である…とか夜景や星景のようにそもそも元の光が僅かかな場合にISO感度は「仕方ない、あの先輩に頼むか!」といって出番となる訳です。

この写真はISO感度先輩が1000まで頑張った写真で肉眼では見えないような小さな星々や流れ星まで写真にできました。最近のカメラではISO1000やISO2000くらいでは高感度に設定したとは思えないほど、ノイズの少ないカメラが増えました。
一方で露出にはこんな考え方もあります。目の前の100の光に対して必ずしも100で撮る必要はありません。あなたが情景や被写体から感じたことを表現する手段として60とか130で撮ってもいい訳です。

この作品は日の光が僅かしか入らない山道でとりました。そこに咲いていた紫陽花に僅かな光が当たっていたのを私は見逃しませんでした。紫陽花を撮ったというより僅かな光のある空間に惹かれて撮ったと言った方がいいかもしれません。
実際の100の明るさの通りに撮ったのではなく「僅かな光」を明確に表現する手段として70くらいの露出を選んで撮ってみました。もちろんこの逆もアリで実際の明るさよりもうんと明るく撮ってみるのも面白いです。
ここが露出で魅せるやり方の最も面白いところだと私は思います。
小学生でも分かる絞り、シャッター速度のお話でした!!!