究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、ここ最近1年以上前に書いていたツーリング写真の基本的なことを、現在の考えで改めて書き直して解説をしております。
今回はそんな初歩的なツーリング写真解説としてフレーミングについてビギナーの方を対象に書いてみたいと思います。
皆さまは「お子様構図」という言葉をご存じでしょうか?幼い子供が書いた絵のように人や家や木などを画面内に並べているだけの単純な構図のことです。これが悪い訳ではありませんが、多くの写真のビギナーは被写体にカメラを向けて枠内にバッチリ収めてお子様構図で撮ってしまうものです。

ご自身の撮った写真に「何か平凡すぎるな…」とお悩みでしたら、その解決方法はたくさんあります。中でも手っ取り早い手法はお子様構図はやめてフレーミングによって被写体を切り落としてしまう撮り方です。
フレーミングとは画面という長方形の四角を意識して、その四辺を巧みに使い被写体の存在感を調整したり、フレーム外の様子を見る人に想像させたり、余計なものを排除したり、額縁のようなデザインを作ったりする手法です。
もちろん背景の範囲を選ぶというのもありますが、単純にそれだけではないのですね。

この写真は北海道ツーリングでのワンシーンですが、コムケ湖にあった趣ある番屋にR1200GSアドベンチャーを停め、ライダーはその場を離れゆくシーンを演出しています。ライダーは左のフレームで切り落としていますが、これによりフレームの外には何があるのだろう?何に向かって行くのだろう?と写真の観賞者に想像を誘うことができます。
また写真の観賞者とは文字があれば読もうとするし人物がいれば顔を見ようとするのが心理です。この写真のように顔を見切れにすると「どんな人物なのか?」という想像も誘います。

もう1つは被写体の存在感の調整です。この作例のように被写体が複数ある構図を作る場合、作品の主題を明確にするために存在感を調整する何らかの手法が求められるものです。簡単に言ってしまえば主役を1つにすることです。
この作品の場合は千葉の人気ローカル鉄道である小湊鉄道のキハ(車両)とR1200GSアドベンチャーの二者が存在する訳ですが、どちらか片方が明確に主役であるよう構図を作ります。この場合は小湊鉄道が主役でR1200GSアドベンチャーは副題に徹してもらいました。ピントを小湊鉄道におきR1200GSアドベンチャーはボケています。
そしてフレームで切り落とすことで決定的に存在感を弱めました。
やや高度な話ですが、この作品の場合は画面の下部にある辺の暗い影の部分もフレーミングとして効いています。フレーム近辺を黒っぽく覆うことで画面の土台として安定感を与えています。ここが影だったのは偶然ですが重要なことはその要素に気が付いてフレーミングとして意識して撮ったという事です。

その他にも作例はご用意できませんでしたが被写体の高さや大きさを強調するため画面の上辺で少し切り落としたり、逆に小ささ低さを強調するため被写体の上にたっぷりとスペースを設けて構図するのもフレーミングと言えます。
例えばホンダモンキーを撮るときは、その小ささを表現するためたっぷりスペースを作ったフレーミングをします。ドアップにしたらモンキーの小ささが伝わりませんからね。このように被写体の特徴や魅力を伝える手段としても使えるのです。
フレーミングで被写体を切り落とす時の注意点は1つです。それは真っ二つに切らないこと。フレームが被写体の中心を貫かないことです。
切り落とす時は黄金比や白銀比などを目指すのですが、難しいのでここでは単純に1/3単位で切っていきましょう!と覚えて下さい。1/3単位といえば露出補正と同じですね。バイクの車体に対して1/3単位であったり、ライダーの体全体に対して1/3単位であったり、ホイールの円といった図形要素に対して1/3単位であったりします。
こういったフレーミングを駆使して存在感の調整や枠外の様子へ想像を誘う表現手法が必ずしも良いという訳ではありません。あくまで撮り方の引き出しとして1つ持っておきましょう、という程度です。それにお子様構図でも傑作は成しえます。しかし多くの写真ビギナーはフレーミングを意識できず、被写体を枠の中に収めればそれで良いと思い込んでいるのも事実です。
まずはこの思い込みを取り除きましょう。今回ご紹介した3枚の作品で被写体は必ず枠の中に収める…は間違いであるとお分かり頂けると思います。
フレーミングで魅せる撮り方はビギナーの方でも最初に挑戦しやすい方法です。ぜひ次のツーリングでやってみて下さいね。
今回はこの辺で!
600㎜のレンズに2×エクステンダーを装着して1200㎜相当で撮ったストロベリームーン。フレームで少し切り落とすことで迫力を出している。