究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、今回は撮った写真をソフトウェアーで調整するレタッチのことについて少し書いてみたいと思います。
いまだにソフトウェアーによるレタッチやRAW現像について誤解している人をお見受けします。レタッチやソフトで撮った写真を調整するのは邪道であると。
そのような誤解を生んだ経緯は写真を良く見せよう、目立たせようと節度なく派手にした写真が出回ったため、それに違和感を感じた人がレタッチはインチキであると騒ぎ始めたことだと思います。
確かに過度なまでにシャドウリフトしてイラストのようにしたり、人の顔や地面までピンク色の桜の風景写真を作ったりと、思わず目を背けたくなる写真は主にSNSやネット上で散見されます。

しかしそれを見てレタッチは邪道であると言うのは完全なる誤解です。そもそも全てのデジタルカメラはシャッターを切った当初はRAWであり、それをカメラ内のCPUが瞬時に現像処理(つまりレタッチ)してJPEGにしてカードに記録してくれます。
きっとレタッチ否定派の人は写真らしい違和感のない写真こそが正義である、と主張したいのだと思います。それであれば、その方の考える「より写真らしい」写真になるようレタッチすれば「これこそが正統派の写真である」という作品を作れるのではないでしょうか。さらに例え話をするなら最新のデジカメで撮った画像を30年前のカラーフィルムのように仕上げることも可能なのです。
カメラのコンピューターに任せるか、自分でやるかの違いなのですね。
RAWのメリットは次のようなことです。カメラが取り入れた光の量の観点で、通常であれば範囲外であったものも実は残してありますよ。だから必要であれば後で呼び起こしてくださいね。という記録形式なのです。
ただ、これでは情報量が多すぎてファイルが重いので「必要でないなら捨てちゃいますね」といって範囲外の隠されていたデータをばっさり捨てて圧縮したファイルがJPEGです。
そしてRAWからJPEGに圧縮される際に人物なら少し赤みを、風景なら青や緑を鮮やかに、といった具合にカメラ内のCPUが決められたレシピのようなもので仕上げてくれるのです。
いわゆる「撮って出し」…つまりレタッチしませんでした、という写真が一番美しいと感じるのであれば、そのカメラのCPUにあるRAW現像のレシピがあなたの好みにマッチしているという事です。
RAWで記録してLightroomやDPPまたはSilkyPIXなどで現像する際、明暗差の大きいシーンなどで黒つぶれ、白飛びしてしまった部分も実はデータとしてはしっかり写っているので起こすことが可能です。そしてもう1つはホワイトバランスもノーダメージで調整可能なのです。

以前も似たようなことを書きましたが、どんなにカメラが進化した現代でも、撮影者の意図や感情をくみ取れるカメラはありません。だから評価測光に対して「おいおい、そうじゃないぜ」と露出補正をしたり、マニュアルフォーカスに切り替えてピントピークを微調整したりする訳です。レタッチもこれと同様にRAWデータをJPEGにする際に「おいおい、そうじゃないよ、センスないねカメラ君は」と撮影者独自の表現、意図で調整してあげるものなのです。
これが分かればレタッチは「けしからん」とは誰も言わないはずです。けしからんのは中身の無い写真を目立たせようと派手に加工し、気色の悪い画像を発表しているごく一部なのだと思うのですが…どうでしょう。
そして何より難しいのはどの辺をラインに「ここまでやったらもう写真じゃない!」となるかの線引きです。これは誰にもできず、また時代とともに変化することです。ベテランは従来の手法を踏襲しますしニュージェネレーションは大胆にやる訳です。やがてベテランは引退していきニュージェネの割合が増え文化も変化していくのだと思います。
よく聞くのは有るものを消したり、無いものを付け加えたり、切り貼りや合成をするのがダメというのがありますが、それとてコラージュ写真、モンタージュ写真というれっきとしたジャンルが古くから存在しています。
先ほど「気色の悪い画像」と書きましたが、そういった現代で一線を越えた写真ですら数十年という単位で見ていけば芸術へと進化する種となっているのかもしれません。
いまRAW現像とかやらないよ…とお考えの方も、大切な写真を長期保存する意味でRAWでバックアップを作っておくことを強くオススメします。JPEGは劣化もしますし数十年後にはRAW現像を当たり前のようにやっているかもしれません。そうなったとき昔、自分が撮った大切な写真がRAWで存在するのかJPEGしか無いのかでは大きな違いです。
今回はこの辺で!