究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、今回はツーリング写真解説はお休みして久しぶりにBMW 空冷R1200GSに関わるネタを書いてみたいと思います。
BMWと言えばボクサーツインエンジン、テレレバーサスペンション、そしてシャフトドライブですよね。空冷R1200GSもそんなBMWバイクのアイコニックが備わったオールロードツアラーな訳ですが、一見してタフそうに見えるシャフトドライブ。実はこのシャフトドライブの後部あるファイナルギアユニットはこのバイクの最もデリケートな部分でありハッキリ言って弱点とも呼べるところです。
このファイナルドライブユニットに万一、重大なトラブルが発生した場合はアッセンブリー交換となり約30万円の修理費用が発生します。そうならない為に日頃から点検し取り扱いに注意を心がけましょう。
日常的な点検としてはセンタースタンド(メインスタンド)をかけて後輪を手で回し、スムーズに回転するか、ベアリングがゴロゴロ、ジャリジャリと違和感がないか?定期的にオイルを交換しているか、シールからオイル漏れや滲みがないか?などですが、最も重要なのは内部に浸水させないことです。洗車時につなぎ目となっているゴムブーツ周辺などホースで水圧をかけてしまったり、ドロだらけになったからと高圧洗車すると内部に浸水し、放置すると発錆により重大なトラブルに発展します。
激しいオフロード走行、川渡り、長時間の雨天走行などがあった場合は、念のためディーラーで点検することをお勧めします。浸水があっても早めに対処できれば大事には至りません。
今回、私のR1200GS-ADVENTUREは購入から5年、走行距離34000㎞をむかえてパラレバー(スイングアーム)のミッション側とファイナルギアドライブ側を接続している部分のラバーブーツに亀裂が生じました。
ただでさえデリケートなファイナルギアドライブなのに、ラバーブーツに穴があったら最悪です。亀裂が確認された時点で早めに対処しましょう。少しくらいの亀裂でしたらディーラーで補修剤を塗布してくれますが、それは応急対応程度に考えた方が良いです。
交換はドライブシャフトの分解、パラレバーアームを抜いての作業となりますので、私はディーラーに依頼しました。自分ではできそうにない、というのもありますがファイナルドライブの内部の状況をプロの目で点検してほしい、というのももう1つの理由です。
実はこのラバーブーツ、大変不思議なことに劣化で亀裂や破れが発生してしまうのは空冷R1200GSだけらしいです。それより古い世代のR1150GSやR1100GSまたは新型の水冷ヘッドR1200GSや最新のR1250GSなどでは、同じようなラバーブーツはありますが劣化で亀裂や破れなどは滅多に発生しないそうです。
使用状況にもよりますが3~5年程度で交換するケースが多いようです。気になる交換費用ですがファイナル側ブーツ 7420円、ミッション側ブーツ 6800円、ドライブシャフトの分解、パラレバーアームの着脱などを含めた工賃が15000円となります。その他にOリングやナットなど細かな部品、ついでにファイナルギアオイルも交換してもらって合計で34000円くらいです。
そして今回の作業で細かく点検してもらったのですが、ファイナルギアユニット内部に大きな問題は確認できませんでしたが、ファイナルギアオイルに水分が混入し乳化していた!とのことです。
そもそもR1200GSは当初はファイナルギア内部は密閉構造になっていました。しかし中期型が誕生した頃からファイナルギアオイルの漏れやクラウンベアリングのガタつき、シャフトのスプライン部が錆ついて抜けなくなるなど、トラブルが散見されるようになり、BMW側で様々な対処をしてきました。その1つが中期か後期のあるロットから採用されたブリーザーパイプの設置です。当初は密閉だったファイナルギア内部ですが、温度変化などで内圧が変化しシール類に悪影響と判断し呼吸ラインを外へ設けたのです。
…という事はブリーザーラインから雨水が入ってしまう…という事も十分に考えられるのです。
その他にもファイナルギアオイルの定量を200㏄から180㏄に変更するなど、いろんな対処を余儀なくされるほど、このファイナルギアには色々と悩ましい問題を抱えているのです。ネットでR1200GSファイナルギアオイル交換で検索すると定量は200㏄と書かれている情報が散見されますが、現在では定量は180㏄だそうです。たった20㏄の違いで何かが変わるのなら、よっぽどシビアな何かがあるのでしょうね。
ファイナルギアオイル交換はディーラー推奨で2万キロもしくは2年に一度という事になっていますが、今回の私のアドベンチャーの例のように別の問題の早期発見という意味でもう少し短いスパンで交換をした方が良さそうです。
空冷R1200GSの唯一で最大の泣き所と言えるファイナルギアドライブ。ここをユーザーが管理できるかが長くR1200GSを維持していく上での重要なポイントとなります。しかし過酷なオフロード走行を前提としたGSがなんとも情けない…私は個人的にはBMWにこの部分だけはRTやRと共通構造にせず専用設計にして欲しかったと言いたいです。意匠の問題もあるかもしれませんがゴムブーツは外から被せてリングで締めるという構造が確実だっと思うのですけどね。
R1200GS乗りの間では知られたことですが、新たなR1200GSユーザーさんはファイナルギアの管理、しっかりやってくださいね!
ではまた。