究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、突然ですが「ボーっと生きてんじゃねえよ」は見ていますか?あのNHKのチコちゃんに叱られるって番組、面白いですよね。5歳の女の子の設定であの突っ込み。そして素朴な疑問に対して的確な答えを持ち合わせていないゲストとのやり取り。
しかしボーッと生きていても悪い事ばかりではありません。以前も同じことを書きましたが人がひらめく瞬間とはボーっとしている時が多いのは様々な研究で証明されているそうです。
それは散歩している時、お風呂に入っているときなど脳がリラックス状態である時。会社の自席や会議ではいくら考えても全く良いアイデアが浮かばなかったのに、お風呂に入ってリラックスしていたら突如として思いつく、こんな経験ありませんか?
私は写真に関わる新たな撮り方や考え方、このブログに書くネタなど歩いている時によく思いつきます。それからツーリング中に高速道路などを淡々と走っているときも「あっそういう事か」「コレいいアイデアだ!」といったひらめきがあります。
脳のリラックス状態を意図的に作るという意味で、あえてボーッとする時間を作ってみると何か良いことがあるかもしれませんよ。いつも同じような写真ばかり撮ってしまう、という方は撮るときに考えるのではなく、普段の何気ない生活の中に1日10分で良いから「ボーっとしている時間」を作って、そこで写真に関わる新たなアイデアを考えてみては如何でしょう?
さて、今回は<中級>ツーリング写真解説として「絞り開放の裏技」と少々大げさなタイトルを付けてしまいましたが、絞り開放の隠れた使い方をご紹介してみたいと思います。

<中級>ツーリング写真解説ですので絞りと被写界深度の初歩的なお話は割愛いたします。中級者の方でしたら被写界深度はカメラから被写体が近い程に浅く、離れるほど深くなるのはご存じだと思います。
通常、多くのシーンで絞りを解放するというのはポートレートやバイクの特定の部分をアップしたい場合などに、背景となる部分を大きくボカしたい時に使いますね。今回はそれとは対照的な考え方でピントを合焦させたい範囲という意味での解放の使い方のご紹介です。
上の作例はレンズEF70-200㎜F2.8Lで200㎜で撮りました。R1200GSアドベンチャーが停めてある場所までのカメラディスタンスはおよそ30~40mです。この場合、このレンズの解放F2.8で撮ったら被写界深度はどれくらいでしょうか?…おそらく4~5mあると思います。
この写真の主題は菜の花です。菜の花がたくさん咲いている場所に線路がS字で入っているのが気に入ってここで撮影しました。またそのことが最も魅力的になるよう構図しています。ここで重要なポイントは主題である菜の花(+線路)以外の被写体である小湊鉄道の電車、R1200GSアドベンチャー+ライダーなどの脇役は、素晴らしき脇役として良い仕事をしてもらうため、撮影者が存在感をコントロールしなくてはいけません。
せっかく菜の花、S字の線路に注目して構図したのに電車をドーンと大きく撮ったり、R1200GSアドベンチャーにバッチリピントを合わせてしまえば、どれが主題なのか明らかではなくなり散漫とした欲張り構図の出来上がりになってしまいます。
ここでは離れたカメラディスタンスでF2.8を選択し菜の花のある部分だけに合焦させて撮ってみました。これにより菜の花の咲いているポイントにぴったりと合焦範囲がかかり、かつ電車とR1200GSアドベンチャーはボケて存在感が調整されました。これで写真を観た人の多くは「やっぱり房総は菜の花がいいね」といった具合に関心の対象が菜の花で安定するはずです。
もちろん小湊鉄道の電車もR1200GS+ライダーも重要なんです。わざわざここにバイクを停めて、電車が来るまで長い時間待って…それなのに小さく撮ってボカしちゃうなんて勿体ない!という気持ちはよ~く分かりますが一番大切なコトは何だったか?最初にここで撮ろうと思ったコトをブレずに持っていれば、その他の要素を素晴らしき脇役として構成できるはずです。
撮りたいと思った対象をアレもコレも画面に入れてゴリゴリで撮るのは初心者の時に卒業しましょうね。時に絞り開放を駆使してボケ具合をコントロールして被写体の存在感を調整してあげるのです。それぞれの被写体が映画のキャストだとすると、撮影者は監督です。「俺が主役、いや俺が主役だ!」とみんなが騒いでいるような映画にしないよう裁量してくださいね。
今回はそのための手法の1つとして長いカメラディスタンスでの解放の使い方の一例をご紹介しました。
・主題が最も魅力的に見えるよう被写界深度をコントロールしよう ・被写体まで距離がある場合、絞り開放でも被写界深度は数メートルにおよぶ
今回はこの辺で!!