究極のツーリング写真 touring-photorgaphy.com 読者の皆さま、最近以前よりも輪をかけてミラーレスカメラの話題がカメラ業界を賑わせていますね。シェアを大きくリードしたSONYを大御所であるキャノン、ニコンが追従する形になったので、誰の目にもこれからはミラーレスだ、と見えるのは当然ですよね。
技術の進歩によって従来は不可能だったものが実現されるのはカメラに限らず素晴らしいことです。しかし使う側の我々は進化したものと引き換えに何かを失ってはいないだろうか?と今一度考える余裕が欲しいですね。
決してミラーレスカメラを否定する訳ではありませんが、いまある光学ファインダー搭載の一眼レフは例えば数十年後には消滅していて「むかしはペンタプリズムのファインダーで綺麗に見れたよなぁ」なんて言っているかもしれませんね。個人的には光学ファインダー搭載のデジタル一眼レフはデジタルとアナログのハイブリッドのようで、撮影者の感覚と調和するのに絶妙なバランスなのではないかな…?なんて思ったりもします。
さて今回は<初級>ツーリング写真解説として超初歩的なお話をさらっといってみたいと思います。つい先日、ある知人から「私もいい写真が撮りたいけど、いつも平凡な写真を撮ってしまい進歩がない」というご相談を受けました。
その方は例えば絞りを変えると被写界深度が調整できるとか、そういった知識は一通りもっておられるようでした。ではその方の悩みの正体は何なのでしょうか。

いろいろとお話を聞いているとある事に気が付きました。例えばバイクが最もカッコよく見える角度というのがあるから、しゃがんだり左右に動いたりしてその角度を探すといいですよ。とアドバイスすると「え~なんか大変、めんどくさいですね」と返ってきて、背景がゴチャゴチャしていたり画面の四隅に電線やガードレールなどが入ると良い写真にならないので、まずは写真に適した背景探しを先にやるといいですよ、とアドバイスするとやはり「ええ~めんどくさいですね」と返ってくるのです。
そう…めんどくさい…。その方はいい写真を撮りたいんだけど色々と労を費やすのはめんどくさいのです。
バイクの中心に電柱が貫通していたらバイクの位置を動かして調整しましょう、と言えば「たかが写真にそんなマメなことできませんよ」挙句には「自分ヘタレなんで気合ないんっす」とまで…
私の個人的な感覚では本当に残念で仕方がありませんが、冷静に考えれば写真を撮るなんて行為は極めて万人に普及している訳で、ツーリング先で油絵を描くとかツーリング先でギター弾き語りをするとかに比較すれば誰でもやるフツーの事です。だから「人によってはこんなものか…」と捉えるのがむしろ正しいとさえ言えます。
しかし、それではその方の「いい写真が撮りたい」という要求の源は何なのでしょうか?SNSで「映え」する写真が撮りたい?綺麗に撮って友達を驚かせてみたい?…この辺はかなり個人差があるように感じます。「どうだ!俺、うまいだろうっ」と自慢したいというのも確かに人によっては願望としてあるかもしれません。このように写真という趣味に限っては一言に「いい写真」と言ってもあまりに多様だと感じます。
そう考えると個人的な写真家を名乗る私、立澤重良が誰かに「いい写真とはこうですぞ!」なんて話をしたところで、大半の人には迷惑なことなのかもしれません。その人が景色や被写体を本物ののように撮ることや高画質で撮ることが「いい写真」と思い込んでいれば尚更のことです。

いい写真を撮りたいんだけど難しいことやメンドクサイのは苦手。それって働きたくないどけお金は欲しいって言っているのと同じで、労を費やさず成果が欲しいという我儘な要求ではないでしょうか?そして、それは最新のカメラや高級なレンズを手に入れれば実現する…なんて思っていたら勘違い甚だしいですよね。
しかし、せっかく良いカメラを持ってツーリングでそれを使って「いい写真が撮りたい」と言っているのですから、私としては無視する訳にはいきません。結局、その方にできた唯一のアドバイスは「人を感動させられる写真が撮れれば見せる喜びを味わうよ、それを知ってしまえば写真を撮るときに如何なる労力もメンドクサイなんて感じないはずだよ」という事だけでした。
人に感動を与えられる、写真を通して多数の人にメッセージを伝えることができる。そしてそんなコトができてしまう新しい自分の発見。こういったことに幸福を感じるのが写真をはじめた初期の醍醐味だと思うのですが。
しかし、その方はどんな景色の素晴らしい道でも前の車をバンバン抜いていくハイペースだし、どんなに美味しいモノでも早食いだし、素晴らしい温泉に行っても烏の行水です。そしてこれらのシーンでいつも感じるのは「最高の景色!」とか「超おいしい~」とか「いい湯だなぁ」とか感想のコメントが一切口から出てこないんですね。
感受性が乏しいと言うのでしょうか?感受性のない人なんていないはずですが、人生のどこかのタイミングで輝きを失ってしまい、今は濁って鈍感なままなのでしょう。それをふたたび磨きをかけて人生を豊かにするのが「写真」という趣味、ライフスタイルだと私は考えます。
しかし…高いカメラを買ってツーリングに持ち出したまでは良いけど…やっぱり厳しいかなぁ…。人には向き不向きってありますからね…。
皆さんの近くにもこういった方いませんか?今回はこの辺で!