究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、前回まで3回に分けて私が愛用しているレンズのご紹介を兼ね、レンズの選び方について解説してきました。
といっても私の場合はかなり特殊ですので、皆さまのご参考になる情報があったか疑問ではありますが…。今回はそんなツーリングに適したレンズ選びについて究極のツーリング写真流に【まとめ】と皆さまにオススメのバイクツーリングに適したレンズをご紹介したいと思います。
究極のツーリング写真流 レンズの選び方
1.レンズ選びは「こんな写真を撮りたい」という具体的なイメージを最初につくる
広がる風景を印象的にしたいなら広角レンズ、ライダーを主体に背景を美しくボカしたいなら解放の明るいレンズ、といった具合に自分が撮りたいツーリング写真のイメージを作るのがまず先決。これがないとネットで話題の最新モデルや高級なレンズを買えば良いのか?と惑わされてしまい、自分の考えでレンズを決めることができません。
2.撮りたい写真に必要な焦点距離を決めよう
風景主体なら広角、バイク&ライダーを主役に自然な画角で撮るなら標準、友達の走行写真を撮ったり、遠景の山や夕陽などを引き寄せて迫力のシーンを撮るなら望遠。自分の好みに合わせて最も重要視したい焦点距離域を大まかに決めましょう。
3.ツーリングで持ち出せる機材ボリュームを決めよう
バイクの車種がSSだったりツアラーだったりといった車種による積載能力やバッグ、ケース類の容量などによって、人それぞれカメラ機材を持っていけるボリュームが異なると思います。望遠ズームを含めた交換レンズ3本!なんて人もいればコンデジ1つが限界…という人もいるはずです。一般的には一眼レフまたはミラーレス機にズームレンズ1つでしょうか。頑張って交換レンズ+1本でしょうかね。
4.欲しい焦点距離と機材ボリュームが決まったら単焦点かズームかを決めよう
一本しかレンズは持って行けない…という方にはズームレンズがお勧めです。収納、積載に余裕のある方でしたら標準ズームの他に広角側の単焦点レンズか、望遠側で解放の明るいレンズなどを追加すると良いかもしれません。
5.予算と相談していくつかの候補から選択しよう
ズームレンズか単焦点レンズか、欲しい焦点距離、解放F値など大まかに決まったら予算に合わせて候補を絞ってみましょう。スペック的な部分がどうしても譲れない、といった場合は無理に純正にこだわらずSIGMAやTAMRONといったレンズメーカー製も選択肢に入れてみましょう。もちろんヤフオクやメルカリで中古を狙うのも予算を抑えるのに賢いやり方です。

☆ズームレンズか単焦点か
これはツーリングで持っていける機材ボリュームに余裕のある人の選択ですが、もしボディに加えてレンズは3本は持っていけるよ!というスゴい人がおられましたら28㎜単焦点、50㎜(F1.8くらいは欲しい)単焦点、70-200㎜望遠ズームの3本がお勧め。もしくは20㎜単焦点、35㎜単焦点、70-200㎜望遠ズームです。

ズームレンズ1本でいくぞ!という事であれば多くのメーカーから製品化されている24-105㎜ズームレンズがお勧めです。キャノンであれば下記の通り。
・EF24-105㎜F3.5-5.6 IS STMで定価7万円、重量は525g。
・高級なLでEF24-105㎜F4L Ⅱ IS USMで定価15.5万円で重量は795g。
・APS-C機のユーザーであればEF-S18-135㎜F3.5-5.6IS STM 6.8万円で重量480g。
SONYのEマウントであればFE24-105㎜F4G OSSで定価16.5万円。ニコンなら24-120㎜としてラインナップしているようですね。

F4通しやコーティングなどスペックは譲れないが価格は抑えたい場合のSIGMA24-105㎜F4 DG HSM ART 12.5万円(キャノンのLと3万円しか変わらない・・・)で重量は885gとチョット重い。
キャノンユーザーの場合、コスパと重量を考えると、圧倒的にEF24-105㎜F3.5-5.6 IS STMがお勧めです。EF24-105㎜F3.5-5.6 IS STMでは画質の面で若干心もとないと言う方は中古でEF24-105㎜F4L ISの旧型の1型でしたら中古相場は4万円台であるので、これもオススメです。
SIGMAやタムロンといったレンズメーカー製を選ぶ場合の注意点は防塵、防滴の性能が純正より劣ること、これは過酷な環境で使用する我々バイク乗りにとって軽視できないポイントです。ただ私は長いことSIGMAレンズを愛用していますが壊れたことは1度もありません。それとボディ側のレンズ補正機能やDPPなどのメーカーのレタッチソフトで一部の機能が使えないなどあります。買う前に事前に情報をリサーチしましょう。

単焦点はズームレンズより描写が美しい…とはよく聞きますが、ひと昔前のズームレンズと違って現代のそれなりのグレードのズームレンズであれば、単焦点と比較して明らかに描写に差が出るとは言い難いです。
単焦点レンズの描写は確かに素晴らしいですが、特殊な用途で発揮するメリットを除いて我々オートバイ乗りにはデメリットの方が目立つのは事実です。欲しい画角に合わせて買い揃えるのも経済的ではないです。何よりツーリングに行くのに3本も4本もレンズを持って行くなんて厳しいですよね。
なので総合的に考えてもバイクツーリング用はズームレンズがお勧めですが、以前に解説したように初級者の人にとってはズームレンズは上達できなくなる落とし穴もあるので、その点だけ要注意です。
☆高級なレンズは果たして必要か
Lレンズを使用している私が言ったら説得力ないですがハッキリ言って高級なレンズはバイクツーリングでは必要ありません。メーカーは製品が実際に販売されるまでの開発費、材料費、生産コストなどを計算して定価を設定します。ユーザーからみた製品の魅力の差で価格を決める訳ではありません。
キャノンEF35㎜F2ISが8.3万円、EF35mmF1.4LⅡUSMが28.5万円。F値こそ違いますが同じ35㎜単焦点レンズで20.2万円の価格差です。しかも安い方のF2には手ブレ補正機能が備わっています。我々ユーザーにとって、この価格差が妥当であると納得できるほどのメリットはなかなか感じられないと思います。
では高級なレンズはなぜ存在しているのでしょう?高度に修正された色収差やF2ではダメでF1.4でなくてはいけない!という要求が自分の撮りたい写真と深く関係しているのであれば、それは選択肢として十分アリだと思います。しかし多くの場合はカメラ業界での技術競争や写真ではなくカメラが大好きだ!というカメラ好きの人たちのトレンドに過ぎないのではないでしょうか。
SIGMA35㎜F1.4DG ARTという素晴らしく好評なレンズからEF35㎜F2ISに買い替えた私の個人的な感想としては世間で騒いでいる「感動の描写性能!」みたいな世界は、実は自分の好みの写真とあまり関係なかった…というのが率直な感想です。
美しいボケ味、解放からシャープで抜けのよい、ピントの立ち上がりがよい、とか良く耳にしますが、そういったことが自分の撮りたい写真と関係しているかそうでないか、これで高級なレンズを買うかどうか決めましょうね。それと高級なレンズとは解放が明るい大口径レンズの場合が多く、画質を高めるためにレンズ構成も多く複雑です。つまり重量があり大きいので撮影機材の積載に制限のあるバイクツーリングにはこの点でも課題になることを忘れずに覚えておきましょう。

☆自分が撮りたい写真が撮れるレンズを選ぼう
レンズ選びは作者の独自で決めるものです。少なくともある程度の経験を積んだ人であれば、自分の写真に対するスタイルや好みが自分で把握できていると思います。バイクへの積載能力や予算などは自分にしか分かりません。つまり雑誌やネットで話題になっている情報はほとんどアテになりません。雑誌やネットで得るこれらレンズやカメラの情報で有益なのは初期不良があってアップデートされたとか、間もなくモデルチェンジなので販売店で安売りが始まるだろう、とかそういった話題ではないでしょうか。
例えばSIGMA150-600㎜F5-6.3DG CとTAMRON SP150-600㎜F5-6.3Di VCといった具合にスペックも価格も似通っているレンズを選びたい場合は大いにネットでの情報や作例を参考にすると良いと思います。しかし、そうではなく「私がツーリングで素敵な写真を撮るのに良いレンズは何だろう?」という疑問についてはネットでいくら検索しても紛らわしい情報ばかりで答えは出てきません。
繰り返しになりますが、まずは「こんな写真を撮ってみたい!」という写真への憧れが先決です。「ステキな写真」「イケてるの」「すげー写真を!」とかではなく「雄大な風景を写真にしたい」「旅のシーンを臨場感で伝えたい」など具体的であるほど選択は明快になります。このように興味の対象がまずは写真でないと製品を選ぶことができない、それがカメラ&レンズなんです。
うわ~3500文字も書いちゃいました。これ全部読んでもらえただろうか…今回はこの辺で…