究極のツーリング写真 touring-photogtaphy.com 読者の皆さま、素晴らしいバイク旅、素晴らしい写真ライフを楽しまれていますか?
先日、久しぶりに大好きな岡本太郎さんの本を読んでみました。皆さんもご存知かと思いますが「芸術は爆発だ」のあの有名なセリフ。実は岡本太郎さんの人柄や作品が飛び抜けているから、というのは間違った解釈であり、爆発とは自分らしさをその瞬間、その場所で芸術として生み出している行為を「爆発」と表現しているのが正しい意味のようです。
岡本太郎さんは写真家ではありませんが、おなじ芸術という観点で考えると写真も芸術ですから、シャッターを切るその瞬間こそ「芸術は爆発である」と考えてやるのも良いかもしれませんね。気分だけでも岡本太郎さんになった感じで!
そういう意味では以前に使っていたカメラ EOS1Dxの鋭いシャッター音は、その場で自分の芸術が爆発しているようで痛快でした。今使っているEOS6D mark2は静音シャッターなので、あまり感じられませんが、なるべく自分と言う人間をその場で爆発させるイメージで撮っていきたいな、そんな風に感じました。
やはり岡本太郎さんは偉大です。
さて今回の<上級>ツーリング写真解説では、だいぶ以前にもご紹介した写真におけるデザインのお話、図形要素、色要素について内容をブラッシュアップして改めて解説いたします。
ちなみに岡本太郎さんは「芸術はうまくあってはならない、きれいであってはならない、ここちよくあってはならない。むしろいやったらしさ、不快感を含め見るものを激しく引き付け圧倒することこそ真の芸術である。」と説いています。これから解説するデザインの話はこの逆のようではありますが、この岡本太郎さんの領域に達するにはまずは「美しい」「整っている」を学び、それを理解したのちで破壊していくのが芸術を志す上での正しい順番だと思います。

ではこちらの作品をご覧ください。当ブログのギャラリーでもご紹介している作品ですが千葉県館山市から望む東京湾ごしの冬の富士山です。この作品を元に今回は写真におけるデザイン要素の図形と色を解説いたします。
写真におけるデザイン要素とは主に・線(直線、曲線、S字線…)・図形(円、三角、四角、〇〇型…)・色(暖色、寒色、進出色、後退色、中間色、中性色…)・立体感・質感・規則的なパターン・シェイプなどです。
その他、デザインと類似していますが分断線が発生した場合のエリアの比率、複数の被写体の大きさ(または存在感)の比率など・黄金比・白銀比・3:2・三分割構図・ファイグリッド・フィボナッチスパイラル・青銅比などの比率も非常に重要です。
これらのデザインや比率は目の前の風景や被写体から、その要素となるものを見出し画面という長方形の四角にどのように取り入れるかです。そして重要なポイントはデザインや比率はあくまで写真の骨格や基礎工事のようなもので、写真の全てではないということ。
見る人に視覚的に与えるバランス、直感的に良いと思える関係であり写真の重要なことはあくまで被写体の魅力をどう表現したか?という作品の意図です。
・図形要素
まずは図形要素の三角です。風景や被写体の中から複数の図形要素を見つけることに成功したら、次に優先順位をつけてみましょう。この作品では富士山の三角、バイクとライダーとタンカーの3ポイントをつなぐ三角が最も重要であると判断しました。それが判明したら長方形の四角内に、その図形が最も理想的な位置に配置できるようカメラアングルを調整します。最重要な図形要素とは枠の中のどこに配置するか?です、したがって枠も黄色線で囲ってみましたよ。
それと知識として…三角は構図内に抜群の安定感を与えてくれます(底辺を水平に配置できる三角に限る)。
次に図形要素の円に注目です。この作品ではバイクのフロントタイヤ、モデルのポージングによってできた腕の輪、LNGタンカーのタンクです。円は写真の観賞者の視線をその場に留める効果があります。この作品の場合、円の要素については特に配置に気を配って撮りませんでしたが、参考までに…タイヤを円の要素として効果的に使いたいとき、画面に対して正円になるようハンドル角度を調整しましょう。
・色要素
続いてデザイン要素の中でも重要な割合を占める色要素です。この作品では下半分については枯れた草地のブラウン、グレーの岩場で進出色です。そして画面の上半分は海面の青、空の水色で後退色です。この相反する特性の両者を組み合わせることによってコントラストと呼んでも良いですが、望遠レンズによって圧縮され失ってしまった遠近感を色の効果によって補うことに成功したのも見逃せないポイントです。青はかすみなどによって遠くに感じさせる効果があるので空気遠近法とも言われています。
写真におけるデザイン要素を学ぶには長方形の四角の中にいかに理想的に配置するかにかかっています。くどいようですが最も重要な部分はここです。
撮影現場で目で見た光景の中にデザインに使える線や図形や色を見つけ出せるのは上級者の域です。言語化で探し当てていくのも有効な手段と言えます。それぞれデザイン要素を洗い出したら画面という長方形の四角にどう配置するのか考えましょう。ただし時間をかけてやる作業ではありません。
視覚的に理想的なデザインが完成したら、その上で光をよみとき被写体の魅力を引き立てましょう。最重要はあくまで「私の場合はこう撮りました」という表現、意図ですので、あまりデザインや比率に神経を取られないよう気を付けてくださいね。
いつかこういったセオリーを全て破壊できる岡本太郎さんのような芸術を目指すため、まずはセオリーを理解しましょう。理解しなければ壊し方も分からないものです。
それではまた!
~本日の毎日100ショットスナップ~


こちらの2枚の写真はどちらも出勤前にスマホで撮りました。1枚目は普通に撮ったもの、つまりカメラ機能の評価測光に任せた露出設定です。2枚目は露出補正を使って暗くし、花に露出を合わせました。1枚目は全体の明るさという意味では適正で葉の様子も明らかですが、肝心な花がちっとも魅力的に見えません。2枚目は全体の平均としては暗く、実際に目で見た光景よりも暗いかもしれません。しかしアジサイの花の魅力を私なりに感じて伝えるにはこの露出だったのです。表現とか意図とはこんな感じなんです。決して難しくないでしょう?