究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、突然ですが自分が死んだ後、この世に残したいものは何ですか?
土地やお金などの財産とかは別として、自分がこの世からいなくなって何年も何十年も経ったとき、ずっと残るものがあったら素敵ですよね。
例えば建設業に携わった人なら建物だったり道路や橋だったり、製造業で開発などに関わった方なら何かの製品だったり。しかしそれは仕事として会社として築いたものであり個人が生んだものではありませんよね。
もし写真芸術を極めて歴史に残るような名作を生み出すことに成功したら、自分がこの世からいなくなった、何十年も何百年も後のその作品は大切に後世に伝えられていきます。写真道を歩む限り、その可能性はあなたにも私にも十分あり得ますよ!
さて今回の<初級>ツーリング写真解説では皆さま理解しているようで実はよく分かっていない焦点距離のお話でございます。
望遠だのズームだのと、簡単なようで実践に結び付けるのが難しいのが焦点距離。原理について解説しているものは、世の中にあふれていますので当ブログでは究極のツーリング写真流に解説いたします。
以下に3つの作例をアップしますが、通常、焦点距離の説明では同じ風景を写して被写体の大きさや背景の範囲の違いを見せるのですが、ここではそれぞれの焦点距離をどんなときに使うのか?を分かっていただくために、3枚とも違う写真で説明いたします。
その前に焦点距離について簡単に説明しておきます。
・広角:風景をワイドに、つまり広範囲に写します。被写体は小さく、そして遠近感(写真の世界ではパースペクティブといいます)がでます。一般的に35mm以下を広角といいます。数値が小さいほど広角となります。
・標準:目で見た風景と同じように写す焦点距離です。一般的には50mm前後です
。
・望遠:遠くて小さなものを大きく写します。範囲は狭くなり遠近感がなく距離方向が圧縮されたような画像になります。70mmくらいから大きな数値が望遠と呼ばれます。200mmくらいまでが中望遠、400mmまでが望遠、それ以上が超望遠といった感じです。
※35mmフィルムカメラまたは35mmフルサイズセンサーのデジタルカメラの場合です。APS-Cセンサーの場合は1.5倍になります。APS-C、フォーサーズなどの計算は35mm換算と検索すると分かりやすいサイトがたくさん出てきますので、そちらをご参照ください。
・ズーム:焦点距離を広角にしたり望遠にしたり調整できることをズームといいます。望遠をズームと呼んでいる人がいますが間違いなので正しましょう。一般的なカメラの多くはズームレンズです。
・単焦点:焦点距離が固定されているレンズ(またはカメラ)です。
では、まずは広角レンズの作例↓↓↓

北海道の雄大な景色です。広範囲にわたって魅力的な風景に広角レンズは有効です。この作例は14mmで超広角なので、かなり極端な例になっていますが。注目すべきポイントは空に広がるように雲があること、そして遠くまで続く草原地帯です。この「広がり感」を作品のメインにしたいと感じたら迷わず広角で撮影です。
「どこまでも続く・・・」を表現したい場合も広角が有効で遠近感が強調され、よりイメージに近づけることができるでしょう。
広角レンズで気を付けたいポイントは歪みです。この作例は歪みが分かりやすく出た絶好の作例です。R1200GS ADVENTUREが斜めに潰されたように見えませんか?
画面の4隅付近は強い樽型(レンズによっては糸巻き型)の歪みが発生し、バイクや建物などの人工物が入ると不自然な絵になります。逆に空や海など自然界のものでしたら、さほど気にすることではありません。
バイクをからめて撮影する場合は歪みが不快にならないよう、バイクの位置や大きさに細心の注意をしましょう。
その他、順光で撮る場合は自分の陰などが写りやすい、絞りを開放してもボケが出にくいなどの特徴があります。
続いて標準レンズでの作例↓↓↓

ヘリオス44という焦点距離58mmのロシア製オールドレンズで撮った1枚です。ご覧のように被写体や背景の距離感が肉眼のイメージに近いのが標準レンズです。1つの被写体を撮るのに最適な焦点距離で写真の世界では「基本」といわれています。50mmにはじまり、50mmに終わるみたいな。
しかし、私のスタイルでは標準の焦点距離の登場はとても少ないです。この作例もストレージから探すのに一苦労しました。
というのも1つの被写体を魅力的に、というシーンがツーリングの美しさを・・・というテーマであまり出番がないのです。もちろん、私の苦手な焦点距離であるとも言えるのですが。例えばバイクがメインまたは、ライダーがメインという作品でしたら標準で撮るのが良いでしょう。
私の場合、1つの被写体を対象に撮る場合のレンズは35mmが多いです。
それと50mm単焦点のレンズ(またはカメラ)で練習をすると、焦点距離、画角の感覚、被写体に寄るという基本が身につきやすく、練習という意味ではとてもお勧めです。写真家の中には50mmしか使わない、という方も多いんですよ。
そして望遠レンズの作例↓↓↓

まだEOS40Dを使っていた頃の古い作品です。撮影地は北海道の野付半島。トドワラのさみしげな光景とカラスが群れている様子が、何かの終わりを感じさせるような崇高な景色でした。
しかしトドワラの群生は浸食と風化で減っており、決して広範囲には存在していませんでした。何よりバイクを停めている場所から、かなり距離が離れていて、普通に撮ったのでは空や水面の割合が多く、トドワラを印象付けることができません。
そこで後ろに下がれる十分なスペースがあることに注目し、長い直線道路(野付に行ったことのある方はご存じだと思います)を利用し、バイクとトドワラを対角に、下がれるだけ下って300mmで撮ったのです。
こうすることによって、バイクとトドワラの距離感はぐっと圧縮され、イメージ通りの画面作りができました。
望遠のメリットは他にもあって、野生動物に警戒されないので作例のような写真が撮りやすいのです。まあ、カラスはあまり人を警戒しませんけどね。本当ならオオワシやタンチョウ、エトピリカ(これはレア!)あたりを狙いたいですが、トドワラとカラスの組み合わせが以外と演出を加えてくれたかな・・・とも感じています。
それと画角が狭いので余計なものを排除しやすい、というのも大きなメリットです。撮影現場は電柱や電線などの邪魔なものが有りましたが、300mmという望遠域なら容易に排除できました。
どうでしたか?通常、焦点距離の説明をするときは同じ景色でそれぞれを撮影して作例を見せるものですが、あえて全く違う写真で解説してみました。私個人の考えですが広角は風景主体の作品、標準は被写体を明確に主役にする、望遠は圧縮効果を利用した画面構成、といったそれぞれの使い方があると感じます。
もちろん、これらに限らず広角、標準、望遠とそれぞれに様々な使い方があって、それは作者の手腕の見せ所でもあります。
あぁっ、タイトルに「5分で分かる」と書いておきながら、結構なボリュームになってしまいました。今回のように初歩的な解説は過去のアーカイブに埋もれてしまったので半年経過を目安にブラッシュアップして再度投稿していきます。
ではまた!