究極のツーリング写真 touring-photography.com 読者の皆さま、皆さまは写真の演出と聞いてどのような印象をお持ちになりますか?
演出はプロアマ問わず写真界ではよく議論されるもので、演出の反対はナチュラル。完全ナチュラル派の人から演出を加える派の人まで、その度合いについては写真家それぞれの考えのもと極めて多様です。
ポートレート撮影でモデルさんに「笑って~」と頼めばそれは演出。目の前の風景の中に枯れた雑草があり邪魔に感じたので取り除いた、これも演出の一種。
私たちが目指すツーリング写真もこの問題については避けて通れない部分です。作品に旅のストーリー性を加えたり、感情表現を入れるためライダーの存在は重要です(必ず必要とは思いませんが)。しかし多くの写真好きライダーは単独行動のため、作品内にライダーの姿を入れるとなると、自ずと自撮り(というワードが適切か疑問ですが)になってしまいます。
カメラをセットしてタイマーなりリモコンなりで自分の姿を撮るのですから、これはもう紛れもない演出となります。本当なら誰か見知らぬライダーを美しい夕日の海岸かどこかで、タバコでもふかしている様子を気づかれず撮れればナチュラル作品が撮れるのですけどね。
私は今更ですが演出は加える派です。目指しているのは心象風景や記憶色の世界であり、あくまで人の心の中の光景を生み出したいと思っています。したがって目の前の風景を忠実に再現するだけの写真には興味がありません。自分なりの表現として演出を加えます。それは自撮りに限らず、例えば14㎜や600㎜といった肉眼とはかけ離れた焦点距離のレンズを使用したり、ホワイトバランスをイメージに近づけるため調整を施したり、Lightroomで質感やかすみ具合などを調整したり、この他にも色々ありますがとにかく演出については一切の否定はありません。
ただし、あまりに事実を歪曲させて写真ではなく別の芸術作品になってしまうような手法は避けています。そういった写真作品も素晴らしいと思いますが、旅の世界を伝えるツーリング写真には似合わないかなと感じるからです。

こちらの作品をご覧ください。恥を承知でカミングアウトするとコレも自撮りな訳ですが、ただライダーの背中を撮るだけとか棒立ちでは逆にマヌケに写ってしまうので、恥ずかしいなどと思わず思いっきり演じ切ってください。
絶対にカッコよくなります。
ポージングひとつ、表情ひとつで劇的に作品にストーリー性や感情が加わります。これに成功すれば写真を見る人に感動や共感をもらえるでしょう。
SNSで発表すると、どうしても撮影裏を詮索する人が出てきます。代表的な反応としては「セルフタイマーでダッシュですか?」とか、星空のシーンでライダーの姿があれば「30秒間も微動だに動かずにいたのですか?」といった類のものですね。
そこに気がいってしまう時点で芸術への意識が低い人かもしれません。私は一時期、この反応を嫌っていましたが、もうこれは人間の心理なのか?こういったコメントを受けるのは仕方ないと諦めています。もしこういったコメントを受けるのが耐え難い、という方はデータを記入する際に(撮影データを書いてくれという発表の場)予め書いておくと良いです。F2.8 S:unknown ISO:2500 インターバルタイマー撮影 といった具合に。
どうでしたか?!演出と聞くと何となく聞こえは悪いですが、完全ナチュラルも逆に難しいと思いませんでしたか?それでしたら作品の完成度を高めるために、より良い演出を加えてみるのも素晴らしいのではないでしょうか?
ではまた!