クリスマスですね。日本は外国の文化も取り入れてお祝いするのが好きですが、それは日本人がお祭り好きだからでしょうか。私も今の季節、街中がクリスマス一色になると、不思議と幸せな気分になるので、クリスマスが大好きです。しかしクリスマスやハロウィンはやるのに春節や国慶節はなぜやらないのでしょうね。
さて今回は久しぶりの<上級>ツーリング写真の解説でございます。写真とは美しい景色、感動的な何か、ストーリーを感じる1枚など、いろいろあります。これらは鑑賞者が写真を見た後に美しいものを見せてもらった、感動して励みをもらったなどポジティブな気分になるものですよね。
今回はそんな美しい写真とは逆に、恐怖、不気味さ、不安、崇高さなどを表現したツーリング写真としては極めて少数派な作品のご紹介です。

上の作例をご覧ください。割と最近の投稿にも使った北海道 襟裳岬の近くにある百人浜でのワンカットです。以前にアップした写真とは別カットですが、すこし撮影時間が異なるだけで空の表情が全く違い、こちらは薄雲に隠れた満月のハイライトと、一部がブラックホールのように穴の空いた様子が印象的です。
地上と空の露出が合わずLightroomを使ってそれぞれを調整しています。雲の不気味さを強調させるため、わずかですが覆い焼で調整を施しています。海岸の見える原野の中、一直線にのびる道の先には、夢のような世界や希望はなく、地の果てへ続く暗黒の道とでも表現しましょうか。
ここで注目していただきたいポイントは水平線が大きく傾いていることです。通常、風景写真では水平線や地平線は精度よく水平にするのが基本です。人間の目は案外と正確なもので、わずか2~3度の傾きであっても気になってしまうものです。
水平方向の線が精度よく出ていれば画面内に抜群の安定感をもたらせることができます。安定感は安心感。しかしここでは敢えての逆転発想です。意図的に水平を無視して斜めにし、鑑賞者へ不安感を煽ってみましょう。
デザインの要素で斜めの線は動き、不安定を与えます。
いま考えてみると、この写真はもう少し斜めに傾けても良かったかな?とも感じます。というのも道路の白線が悪い意味で画面内に安定を与えてしまったから。せっかく水平線を無視して傾けたのに、道路の線がたまたま安定した角度で収まったのですね。
前回の写真と違い、こちらはライダーの姿がありませんが、もしもう少し斜めにできたなら、鑑賞者はまるでフラフラとして倒れてしまう寸前のライダーの視線を連想するでしょう。
印象的な写真とは時として恐怖、不安、不気味さを表現するのも良いものです。ただ、いつもいつもこのような写真ではいけませんが。例えばあなたが個展を開催したとして、このような作品を10作ほど並べたとしましょう。鑑賞者はあなたのギャラリーを後にするころ、ぐったりしているでしょう。戦場写真展のように何かのコンセプトがあるなら別ですが。
美しい夕陽、色鮮やかな草花、楽しそうなポートレート、ダイナミックな景観などの写真と織り交ぜて、こういった崇高な作品を組写真にすると、山あり谷ありの旅の世界を題材にした写真展ができるかもしれませんね。
今回は少々マニアックではありましたが旅とは時として過酷であることを表現するのに、こんな写真も良いのではないでしょうか?というお話でした。
それでは皆さん~素敵なクリスマスをお過ごしください!
↓↓↓撮影地↓↓↓
時として不気味さや崇高さを表現しましょう、なんて言いましたが撮影地は北海道屈指の心霊スポットで本当に夜に行くと不気味です。昼間に走る分には黄金道路では最も風景明媚な場所と言って良さそうですけどね。